強い勢力の台風がやって来ていたときの、避難してきた人にたいする区の対応

 強い勢力の台風が日本に上陸した。東京都の台東区にいたホームレスの人たちは、強い雨風をしのぐために避難所に避難したところ、避難所から追い出されたという。ホームレスの人たちは避難所を利用しては困るということで、区の役人が利用させない対応をとった。

 日本の社会では、住所が不定の人にきびしいのだと言われている。住む場所がなくて、住所を持っていない人に冷たいのである。住所がないということは、すなわちあやしい人間であると見なされてしまいやすい。これは農耕の文化による定住を本位(中心)としたあり方だと言えるだろう。

 強い勢力の台風がやって来ているのだから、その中で戸外にいなければならないのなら、命に関わることになりかねない。命を守る行動をしてくださいとさまざまなところで呼びかけられていたが、その中には当然のことながらホームレスの人もまた入るものだろう。

 区だけを必ずしも責めることはできないところがある。区だけに限ったことではなくて、日本の社会の全体のありようが関わっていることだと見なせる。衣食住などの最低限の基本となる必要(ベーシック・ニーズ)を満たす権利がすべての人にあるはずだから、その最低の線を満たせるようであってほしいものだ。それができないのなら、いったい何のための豊かな社会なのだろうか。

 誰しもが最低の線より以上でいられて、衣食住の基本となる必要を満たせるようであって、はじめて豊かな社会と言えるから、そこの優先順位はほかのものよりも高いものだととらえられる。

 税金を払うとか払わないとかで線引きするのは適したことだとは言えず、それはていどの問題にすぎないものだ。最低でも一円くらいは誰しもが何らかの形で税金を納めているだろうから。税金を払うか払わないかで人を線引きするのは、市場原理を当てはめてしまっている。そうではなく、個人の尊重ということで、せめて緊急のときくらいは(緊急のときでなくてもそうであることが理想だが)、みんなをまんべんなく等しくあつかうことが適切だ。

 参照文献 『貧困の倫理学馬渕浩二 『財政のしくみがわかる本』神野(じんの)直彦