いまの首相の言うことには抑揚がとれていないことが少なくない

 旧民主党の時代は悪夢だった。首相はテレビ番組に出たさいに、そう言っていた。首相がそう言うことについては、個人としては違和感をもたざるをえない。

 首相は国の長であって、政治の権力者なのだから、その地位にふさわしいことを言うべきだ。旧民主党のことを否定するのだとしても、抑揚をとるべきである。

 たんに、旧民主党の時代は悪夢だったというのでは、抑揚がとれていない。そう言うのではなくて、こういうよいところがあったが、ここは駄目だった、というふうに言えば、つり合いがとれる。

 政治というのは二面性があるのだから、たんによいとか、たんに駄目だというのは、基本として言えるものではない。旧民主党の時代は悪夢だったというのは、一面性による見なし方だろう。

 国民には一面性の見なし方は許されるとしても、国の長である首相がそういう一面性の見なし方をとって、それにのっとった発言を公の場でくり返すのには、違和感をもたざるをえないのだ。

 肯定して否定するとか、承認して反論をするだとか、そういう工夫が国の長である首相にはいる。その抑制の工夫をとらないで、ただ他を否定するとか、反論するだけだとかというのでは、つり合いを欠く。

 参照文献 『対話力』樋口裕一 久恒啓一(ひさつねけいいち) 『ポリティカル・サイエンス事始め』伊藤光利