安定と権威主義と、不安定と民主主義(政権の交代)

 政権が交代して、残念ながら政治が不安定になった。それであの、民主党政権が誕生した。首相はお決まりのように、旧民主党のことを悪夢だと言っている。

 首相が旧民主党のことを悪夢のようだとくり返し言うのは、個人としてはうなずけないものだ。政権の交代となって、政治が不安定になったというのだが、不安定になったから悪いとはいちがいには言うことはできない。

 政権が交代して不安定になったかどうかはそもそも定かではないが、かりに不安定になったとしても、それだからといって悪いということには必ずしもならない。不安定であるというのは、活性化していることでもあるのだ。安定しているというのは、不活性であることをあらわす。

 安定しているとはいっても、それは表面のことにすぎず、いわば、嵐の前の静けさだということがある。これは準(メタ)安定の状態とされるものだ。ほんとうの安定とは似て非なるものだ。安定と準安定とをいっしょくたにするのはふさわしいこととは言えないし、不安定なのをすなわち悪いことだというのも適したことではないだろう。

 参照文献 『安部公房全集 第十一巻』安部公房 『逆説の法則』西成活裕