アベノミクスの成功の神話と自己触発構造

 いまの首相による経済政策である、アベノミクスはうまく行っている。それにまちがいはない。与党である自由民主党が、党内で配ったという冊子の中には、そうしたことが記されているという。

 アベノミクスがうまく行っているのにまちがいはないというのは、自己触発構造によるものだ。これはいわば、循環論法のようなものだ。たしかな根拠にもとづくものというよりは、根拠が結論になっているといったことである。

 アベノミクスにかぎらず、いまの首相による政権は、自分たちのやっていることが、うまく行っているからうまく行っている、といったようなことで、閉じたあり方になっているのが見られる。

 閉じたあり方ではなくて、開かれたあり方になるようにして、他者触発構造であることがいる。他者というのは、たとえば反対勢力(オポジション)である野党や、権力に批判的な報道機関がある。それらの言っていることを受けとめることが、政権には求められる。それをしようとしないかぎり、閉じたあり方が改まることはないだろう。

 他者触発構造とは、対話を行なうということだ。対話をせずに、同質の者どうしの会話や、独話をするのでは、日本の国や国民にとって益になることを行なうことはできづらい。

 参照文献 『精神の政治学今村仁司 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『理性と権力 生産主義的理性批判の試み』今村仁司 「他者を信用するということ」(「現代思想」一九八七年八月号)今村仁司 『あなたの人生が変わる対話術』泉谷閑示(いずみやかんじ) 『ネトウヨとパヨク』物江潤(ものえじゅん)