場当たり的で場面ごとに表面的にふるまっているいまの首相による政権

 条件なしで、日本と北朝鮮の首脳が会談することを目ざす。首相はそう言う。そうは言うものの、実現のめどは立っていないのだという。

 ふつう、首相が他国の長との会談に触れるときには、すでに実現のめどがかなりのほど立っているものなのだという。めどが立っていないのはふつうではない。国内向けの首相のひとり相撲だ。中身のある外交のにおいがしてこない。元外務省の人はテレビ番組においてそう言っていた。

 いぜんにはあれほど圧力、圧力、と言っていたのに、それがいまではころっとうって変わって対話にひるがえったのが、いまの首相による政権だ。これが何をあらわしているのかというと、節操のなさだ。軸がないので、あれ(圧力)からこれ(対話)へと無節操に転向したのだ。

 対話ではなく圧力から、圧力ではなく対話にころっとうって変わる。いまの政権はいったいどういうつもりでそうした場当たり的なふるまいを行なうのだろうか。定見というものがなく、思考停止におちいっているように見えてならない。融通がきくというのではなく、ぶれにぶれてしまっているようだ。

 参照文献 「二律背反に耐える思想 あれかこれかでもなく、あれもこれもでもなく」(「思想」No.九九八 二〇〇七年六月号) 今村仁司