首相がうっかりしたという話

 アメリカのニューヨークで、ネクタイ屋に入った。そこで首相はネクタイを選んでレジに向かった。そのときになって、ドルを持っていないことにおそまきながら気がついた。

 首相と結びつきが強い自由民主党の議員にも、同じようにネクタイを買うことを首相はすすめていたという。首相は支払うときにドルをもっていなかったので、自民党の議員がかわりに立て替えて支払うことになった。

 ネクタイ屋でドルを立て替えてもらったことを、アメリカの外遊中に首相は忘れていた。いつまでも首相が言い出さないので、プレゼントすることにしたのだという。

 プレゼントされた形になった首相は、そのネクタイを身につけて国会にやって来た。身につけているネクタイについて、プレゼントした議員はほめた。誰かにもらったんだ、と首相は受けこたえたのを、当の議員は、それは私があげたものだ、と言ったのだという。

 朝日新聞の記事で言われていた話だ。この話について、首相をほめることになっていない、という感想が言われている。たしかに、この話では、首相が最終的にもうけたみたいなことになっている。それにくわえて、首相がぽかをしたということにもなっている。

 この話の教訓としては、どこかに旅行などで出かけたさいに、ともに同行している人どうしで、お金の貸し借りはしないほうがよい、ということが言える。旅先で他人とお金をやり取りすると、忘れてしまいやすい。一時的に金融のようにして誰かが支払い、あとでそれを清算するというのは、うまいやり方のようだが、もめごとになりやすい。お金は自分で支払う、またはみんなで割り勘にする、というのを原則としたほうが、もめごとになりづらいようだ。

 参照文献 『周作塾』遠藤周作