令和とれいわとレイワ

 新しい元号を、日本ならではのものにするのなら、漢字ではなくてひらがなにすればよかったのではないか。テレビ番組で保守派の識者はそう言っていた。

 たしかに、言われてみると、漢字は中国が生み出した文字である。それを使っているのだから、純粋に日本ならではのものだとは言いがたい。そこで、令和であれば、れいわというふうにひらがなにすれば、日本ならではのものになりやすい。レイワというふうにカタカナにする手もある。

 ひらがなやカタカナの元号を使えば日本ならではのものになるのかと言えば、そうとも言いがたい。ひらがなやカタカナは、漢字をもとにしてつくられたものだからだ。漢字から生み出されたのがひらがなやカタカナだから、いずれにせよ中国から来ているものだということになる。

 ちなみに、漢字というのは、かつては西洋におけるラテン語のようなものだったのだという。漢字を用いる能力があることによって、その人は、東アジアにおける教養や文化に参入や接近することができたのだ。

 日本語というのは漢字とひらがな(とカタカナ)が組み合わされた、和漢混交文によっている。和と漢が組み合わさっている。われわれが現実のものごとをとらえるさいに、和だけでもなく、漢だけでもない、それらが組み合わさった形で現実を受けとっている。雑種(ハイブリッド)のあり方ということだろう。

 参照文献 『読書と人生 刑法学者による百学百話』日高義博 『思考のレッスン』丸谷才一 『これならわかる 中国の歴史 Q アンド A』宮崎教四郎 秋葉幹人