真実より忖度(忖度という真実)

 政治家は真実を語らなければならない。首相はそう言っていた。これは建て前としてはそうだというのはあるが、改めておきていることとつき合わせて見るとおかしいところがある。

 自由民主党の国交副大臣は、首相や財務相に忖度をした、という真実を語ったのに、それをあとで事実ではないとひるがえして、辞任することになった。真実を語ったのに、それをあとでひるがえして、辞任をするという、わけのわからないことになっている。

 首相が言うように、かりに政治家が真実を語らないといけないのであれば、たとえば財務相の一部の記者にたいする態度はおかしいものだ。財務相は、一部の記者にたいする言葉づかいが乱暴すぎる。もっと大きな声で言えや、とか、さっき言ったことじゃないか、とか、上からのもの言いになっているのだ。こうした上からのもの言いは、力関係の嫌がらせ(パワー・ハラスメント)に当たるし、真実を重んじるあり方とは言いがたい。

 財務相は一部の記者にたいして上からのもの言いにはなっているものの、首相よりは多少はましではあるかもしれない。いちおう質問されたことには答えているので。首相は財務相よりさらに(別な意味で)ひどく、質問されたことにまったく関係のないことをべらべらと言うことが少なくない。

 政治家が真実を語ったり、真実を重んじたりするためには、政治家はえばるのではなく、下手に出るくらいでちょうどよい。政権や与党の政治家は、上からのもの言いや、えばっているのがしばしば目だつ。

 上からのもの言いや、えばっているのがあるのは、いまの政権や与党が、自分たちの組織の内や、特定の支持集団に顔を向けているのを示す。広く国民に情報を示したり、広くさまざまな国民からの(きびしい)声を受けとめたりするというふうになっているとは言いがたい。真実や事実を重んじないために、政権や与党は腐敗してしまっているのではないだろうか。

 参照文献 『警察はなぜあるのか 行政機関と私たち』原野翹(あきら) 『会社という病』江上剛