ウイルスへの感染の広がりと、それを支援する対象から外される職業

 新型コロナウイルスへの感染がおきているの中で、経済の活動が制限されている。それによって生活に困る人を救うさいに、風俗業で働いている人は対象から外されることになると省庁は言っている。風俗業は反社会的勢力の資金源となることがあるため、そこに公金(税金)を使うのは使い方としてさしさわりがあるとのことである。

 いまの政権が以前に言っていたことを持ち出せるとすると、反社会的勢力とは何かは時代によって変わるのがあり、何がそれに当たるのかは必ずしもはっきりとはしづらい。また、反社会勢力につながっているおそれがあるのは、賭博や芸能や政治などのほかの分野にも当てはまる。

 政治では、表だけでなりたっているとするのは見せかけにすぎず、裏もまたあるのは見のがせない。その裏のところを反社会だと言えるとすると、反社会的勢力に当たるのだと言えなくもない。

 政治権力は暴力である国家装置(軍隊や警察など)を一手に独占していて、暴力にもとづいた支配する力をもつ。政治権力のまちがった暴力の使い方で失敗をまねいた歴史の例は少なくない。政治が表のきれいで健全な社会に好ましいことだけでなりたっているのだとするのは教科書的だ。たいていは何にでも表だけではなく裏もまたあるものだろう。

 表と裏を反転させることができるが、それをいたずらにやりすぎるのは危険性があるから、黒を白と言いくるめるような修辞におちいってしまいかねない。そこに気をつけることはいるが、現実の政治をとり上げてみても、そこには表だけではなく裏も含まれているから、部分的には反社会的勢力の面もなくはない。

 ウイルスへの感染がおきている中では、たとえ反社会勢力が関わっているおそれがあるとされる風俗業で働いているのだとしても、生活に困っている人がいるとすれば、ほかの人と同じようにできるだけ公として手助けが行なわれるようにするべきではないだろうか。

 どの人がどこでどのように働いているのかは、その人の属性にまつわることに当たるが、属性と個人とを切り分けて見ることができるから、それらをいっしょくたにしないようにして見られる。風俗業という属性に属していることをもってして、生活に困っている個人がいても対象から外すのは、属性に焦点を当てることで個人をとり落とすことになりかねない。

 明らかに法の決まりに反しているのなら、完全義務に反していることになるので、それについては法にのっとって対応されればよい。そのことと、生活に困っている個人を救うようにすることとは、切り離して見ることができるのがある。

 社会の中で生活に困ることになるのは、社会の中にある偏った偏見や誤解が関わっている。省庁はそれをあと押ししてしまわないようにして、職業のうちで貴と賤といったように分けないようにして、たとえどういう属性であっても、生活に困っている人がいれば、とくに緊急のときには公平に救うことが行なわれることがのぞましい。

 参照文献 『事例でみる 生活困窮者』一般社団法人社会的包摂サポートセンター編 『小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける』佐藤優 井戸まさえ 『現代思想を読む事典』今村仁司