オホーツクの冷却(炎上の過熱)

 オホーツクはロシアのものやで。このようにツイートをしたのは、お笑いコンビのウーマンラッシュアワー村本大輔氏である。このツイートがけしからんということで一部で物議をかもしている。

 北海道の市町村などが合同で、オホーツク地域を全国に周知する。その委員会が運営するサイトにオホーツククールというのがあるそうだ。オホーツククールによる企画の一環として、毒舌の炎上芸人ということで村本氏が選ばれた。炎上(芸人)すらも冷やせるのがオホーツククールというわけだ。

 ツイートが一部で物議をかもしたことについて、村本氏が属する吉本興業社は弁明をしている。あくまでも炎上は役がらとしての演出でありネタである。本質ではない。ロシアには、オホーツクという名前の漁港があり、そのことをつぶやいただけである。

 ロシアにオホーツクという名前の漁港があるのだとすると、その事実をつぶやいたのだと見なすことができる。そうした意図によって、ツイートという伝達情報が発せられた。そのツイートを見た一部の人が、意図を読みちがえた。そうした受けとり方ができる。悪く言うとすると、どちらとも受けとれるようにしておいて、受け手によるまちがいを誘っているともできそうだ。

 もともと、オホーツククールから選ばれて、それを全国に周知するという役目の一端を任されている。それに加えて、毒舌の炎上芸人ということでというふうに要請されている。とすると、村本氏のツイートは、あらかじめ(誤解されることも含めて)計算されたものであるおそれが小さくない。ついうっかりつぶやいて、後づけで言い訳をしたとはちょっと見なしづらい。そのようにできそうだ。

 この村本氏のツイートの件は、送り手と受け手とのあいだで、送り手が発した情報が必ずしもその意図どおりに受けとられるとは限らないことを示していそうだ。意図どおりに受けとられないことが少なくはない。意図どおりとはいっても、それは正確にはわからないのはたしかである。本当のところは送り手にしかわからない。

 本当のところはわからないのはあるわけだけど、受け手の見解が必ずしも正しくはないのにもかかわらず、それに確信をもってしまうことがある。そのことにより、何かよからぬ企みをもつ者として送り手を属性(キャラクター)で見なすことにつながる。これは動機論による忖度や、認知の枠組み(スキーマ)がはたらくためだろう。

 送り手が一つの記号表現(シニフィアン)にこめた記号内容(シニフィエ)がある。それとは別に、その同じ記号表現からちがった記号内容が受けとられる。一つの記号表現による記号内容が、一義ではなく多義になることになるわけだ。記号表現としての語句があり、その語句が示している内容との関係がある。語句と内容との関係として、その語句が何を指示しているのかや、それが真なのか偽なのかを改めて見ることができる。

 ツイートなどの文句を受けとるさいに、もしゆとりが持てるとしたら、一つの文脈だけによらずに、ほかの文脈にも持ち替えてみるようにする。そうして見ることができれば、いくつかの角度からとらえることができるようになるので、一つの文脈だけをよしとするのを防げる。つねにはできないかもしれないが、たまにはそうしたふうに見ることがあるとよさそうだ。