アメリカの大統領の支持者たちが、アメリカの国会議事堂に入りこんだ愛国(愛米)による行動

 アメリカの国会議事堂に、ドナルド・トランプ大統領の支持者たちが乱入したという。トランプ大統領をよしとするうったえを掲げながらトランプ大統領の支持者たちはアメリカの連邦議会に不正に入りこみ、アメリカの警察とのあいだでぶつかり合いになっている。

 トランプ大統領は大統領選挙は盗まれたと言っていて、選挙で不正があったのだと言っている。そこから、トランプ大統領をよしとするためにアメリカの連邦議会に支持者が乱入することは許されることなのだろうか。

 どういったことが倫理(ethics)にかなう行動になるのかを改めて見てみるようにしたい。倫理にかなう行動はさまざまにあるものではあるが、その中で法の決まりを守るようにすることがいる。西洋の個人主義の法が定められているのであれば、その法の決まりをきちんと守って行く。それを満たしたうえでおかしいことがあればそれをさし示してうったえて行く。

 西洋の個人主義の法が定められているのであれば、その法で決められている決まりを守ったほうが倫理にかなう行動になりやすい。たとえ法の決まりを破ってでもアメリカの国にとってまちがいなく善に当たることをなそうとすると、カルト宗教のようになってしまいかねない。

 アメリカの国にとってまちがいなく善になることをなそうとする。そうするのであれば法の決まりを破ってもよいのだとなると、宗教の教義(dogma、assumption)と化す。前近代では宗教の宗派どうしがおたがいに血みどろのぶつかり合いをしたが、その時代に逆戻りしてしまう。トランプ大統領は自分の支持者にそれをけしかけてしまっている。そそのかしている。

 トランプ大統領の支持者たちがアメリカの連邦議会に不正に乱入したことは悪いことだが、それをけしかけているのがトランプ大統領だから、トランプ大統領に悪さのもとがあるのだと見なしてみたい。トランプ大統領は上の者がもっているべきしかるべきまっとうな倫理観を示しているとは言いがたい。上の者が腐ればそれが波及して下の者もまた腐る。上の者の悪さを下の者が真似する。悪い形での模倣だ。

 どのような倫理観が上の者にいるのかといえば、それは自由民主主義(liberal democracy)によるようにして、普遍化できない差別をなくして行くことだろう。時の権力者を特権化しないようにする。できるだけ特権化によって差別がおきないようにして、たえずそのことが普遍化できるかどうかの確認をして行く。普遍化できないようなものであればそれをやらないようにしてつつしむ。立ち場の入れ替えや置き換えをして、視点を移動させるようにして、自分の視点を固定化させない。

 社会の中には人それぞれによってさまざまな善の構想があるから、どれか一つだけの善を絶対化しないようにしたい。善よりも正のほうを優先させるようにして、どこかに差別や不平等がおきないようにして行きたい。差別や不平等がおきてしまうと階層化してしまい、めぐまれた階層(class)とめぐまれない階層がおきてしまう。

 善よりも正のほうを優先させるようにして、西洋の個人主義の法が定められているのならできるだけその決まりの中で許容されることを行なうようにしたい。たとえデモをするのにしても、法の決まりの中で許容されるものであればよいのがあるから、許容されるものを行なったほうが正にかないやすい。法の決まりの制約がかかっている中でやっていったほうが正にかないやすいが、その制約をとっ払ってしまおうとすると無制約な形で善に向かってつっ走っていってしまう。無制約なかたちであれば政治の行動をなすさいにうとましいものやじゃまなものがなくなるが、そこに歯止めがかかることはのぞみづらい。

 日本の戦前や戦時中は、日本の国をよしとすることがたった一つの正しいことだとされていた。そのたった一つの正しいことが、すべての国民がそうであるべき当為(sollen)だとされていたのである。じっさいには人それぞれによって色々なちがいがあるものだが、その実在(sein)が国によって上から全否定された。

 アメリカの国にとって善となることがたった一つだけあるのではないだろうから、人それぞれによっていろいろな見なしかたがあり、いろいろにちがいがあるのがじっさいの実在だ。その実在によるようにしたほうが正にかないやすい。実在を全否定してしまい、一つの善だけを上から一方的に押しつけることになると当為になる。そうすると日本が戦前や戦時中におかした大きなまちがいが再生産されることになる。それをできるだけ防ぐようにしたい。

 参照文献 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『ぼくたちの倫理学教室』E・トゥーゲンハット A・M・ビクーニャ C・ロペス 鈴木崇夫(たかお)訳 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『増補 靖国史観 日本思想を読みなおす』小島毅(つよし) 『入門 パブリック・リレーションズ』井之上喬(たかし) 『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』飯田泰之(いいだやすゆき) 『論理的な思考法を身につける本 議論に負けない、騙されない!』伊藤芳朗(よしろう)