日本にたいして文句を言い、そして誰もいなくなった、となること

 日本に文句があるのなら日本から出て行け。ツイッターのツイートではそう言われることがある。

 ツイッターのツイートで言われるように、日本やいまの政権に文句を言うのであれば日本から出て行かないとならないのだろうか。そこで、もしも一億人以上いるいまのすべての日本人が、日本にたいして文句を言ったら、日本からだれも人がいなくなるということになるかもしれない。

 すべての日本人が日本にたいして文句を言ったら、すべての日本人が日本から出て行かないとならなくなるから、すべての日本人が日本からいなくなり、日本は無人になる。日本の人口がきれいにゼロになる。

 仏教では世間には衆生世間と器世間があるとされるが、日本の国から日本人がすべていなくなってゼロになったら、人々による衆生世間がなくなることをあらわす。それでも自然である器世間は残る。これまでに日本人が破壊してきた自然の環境は、日本人がいなくなれば少しは回復するかもしれないから、器世間にとってはよくはたらく見こみがある。

 日本の中の中央と地方との関係では、もしもどこかの地方が日本の国(中央)に文句を言うことがあるとして、それで日本から出て行けということになったら、その地方は日本から独立することになる。

 日本にあるすべての地方が、日本にたいして文句を言う。そのことですべての地方が日本から出て行くことになり、それぞれが日本から独立することになる。そうすると、日本の国から地方がなくなり、日本の国土はゼロになる。領土をもたない国になる。

 全体と部分の関係では、全体は部分あってのものだから、全体があるのだとはいっても、部分がすべて独立してしまえば、全体はなりたたない。部分がすべて去ってしまえば、全体が消え去ることになる。

 ある日本人とかある地方というのは、論理学では特称に当たるが、すべての日本人やすべての地方は全称に当たるとされる。その量のちがいがあり、ある日本人やある地方が日本に文句を言うだけなのであれば、特称にとどまり、量としては少数や一部にすぎない。それがすべてのということになれば、全称になり、全体が関わってくる。

 すべての人やすべての地方が日本に文句を言ってそのことにより日本から出て行く。これはかなり極端な話ではあるから、現実味はないかもしれないが、日本の国がまちがいなくこれからもずっと安定してつづいて行くとは限らない。その絶対の確固とした保証があるとは言い切れそうにない。日本に文句があるのなら日本から出て行けと言うのはいいとしても、そう言っているうちに、日本の内実はどんどんやせ細って行って、持続性がどんどんなくなって行ってしまうこともあるのではないだろうか。

 参照文献 『大人のための学習マンガ それゆけ! 論理さん』仲島ひとみ 野矢茂樹(のやしげき)監修 『仏教ものしり小百科』