愛国心と自尊心の共通点を見てみる―自己保存の順機能(プラス)と逆機能(マイナス)

 愛国心が高いのではなくて、低いのが売国反日だ。そう言うことはできるのだろうか。

 愛国心というのを、個人における自尊心に置き換えてみる。自尊心というのはわりあいにやっかいだ。

 愛国心と自尊心は共に自己保存だ。国への愛や自分への愛だ。自己保存によって自他がぶつかり合って敵対し合うことがある。そのさいには自己保存が悪く働いているのだ。

 自尊心をもてあましてしまうことがある。これは自尊心には過剰さがあって、過大化と過小化の二つの面を持ち、ちょうどよいのではなくて過大になりすぎていることを示している。過大になれば誇大妄想が肥大して、過小になると伸びた鼻をへし折られる。そこから、自尊心には順機能(プラス)と逆機能(マイナス)があることが見てとれる。

 自尊心が過大になって誇大妄想が肥大しすぎると、ごう慢(ヒュブリス)におちいりやすい。神話や説話の中に見られるように、ごう慢になって伸びた鼻はそれをへし折られることが避けられないことがある。(ごう慢さの)罪とそれにたいする罰といったような、応報の仕組みがはたらく。

 自尊心には順機能と逆機能があるので、それがよく働くことがあるし、逆に悪く働くこともある。あればあるほどよいというのではない。状況によっては無いほうがよいことがある。

 自尊心が高いというのは、それを逆機能として見られるとすると、悪く働くことになるので、ないほうがよいことがある。その逆に、自尊心が低いことを順機能として見られるとすると、これもまた低い(自尊心が無い)ことが益としてはたらく。

 愛国心というのにもまた同じようなところがあるとすると、それがあればよいとは言い切れず、無いから駄目だとも言い切れない。自尊心が高いように見えて低いことがあるし、低いように見えて高いことがあるのと同じようなことが愛国心にもまた言える。

 ことわざでいう、大欲は無欲に似たり、といったようなことがあって、大きな(高い)自尊心や愛国心というのは、あたかもそれが無い(低い)かのようものをさす。一つの視点としてはそう見られるのがある。

 参照文献 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『現代思想で読むフランケンシュタイン』J・J・ルセルクル 今村仁司 澤里岳史(さわさとたけし)訳