疑うことができてしまう利用目的

 出会い系バーに頻ぱんに出入りしていた。そうしたことが報道されている。これは首相官邸からの、新聞社への意図的なリークによるとも言われている。こうしたことで、情報が明らかになったわけだけど、文部科学省の元事務次官の人は、その報道を認めているようだ。理由として、どういったことになっているのか、その実態を知るために店を利用していたとしている。

 出会い系バーというのは、行ったことがないから、どういったしろものなのかがいまいちよく分からない。そのうえで、どのような店であるにせよ、そこを利用する客は、いろんな思わくをもっていたとしても不思議ではない。必ずしも単一の理由から店を利用するとは言い切れない。店をどのように利用しようと、店が許す範囲のなかでは客の自由である。そこは、通念をとり外すことも、見ようによってはできるだろう。

 あんまり、売春だとか援助交際だとかいうことで、だからいかがわしいだとかうさん臭い人物だと決めつけてしまうのはどうなのだろう。そうした売春だとか援助交際という熱量の高めな語を持ち出すと、よい印象がないのはまちがいがないけど、必ずしも本質を見ることにはつながらないものである。違法な行為をしていたのならだめなわけだけど、そうでないのであればそこまでとがめられることではない。ほめられたことではないかもしれないが、法が許す範囲のなかで、需要と供給が一致したのであれば、何かこっぴどいことをしでかしたとは言えないのではないか。

 動機はともかくとして、結果が法的に問題ないのであれば、そこまで大きくとり沙汰されないでもよさそうだ。動機について見てみれば、風紀が乱れていそうなお店であるとしても、そうしたところにじっさいに足を向けなければわからないような、現場における生の情報というのもないこともない。虎穴に入らずんば虎児を得ずとか、百聞は一見にしかずということわざもある。わりと新しそうな業態でもあるから、そういう点で実態についての関心をもつこともありえる。どちらかというと白とはいえず、灰色なお店であったとすれば、あえてそうしたところにおもむいてそのありさまを見てみることもありえるかもしれない。

 出会い系バーのふつうの使いかたというのがあって、当人の主張は、それとはちがう目的で店を利用していたというものである。実態を知るためだったということだ。ほんとうのところは、3つの可能性があるかもしれない。主張しているとおり、たんに実態を知るためだけであったのと、主張とは反対に、出会い系バーの業態が想定するふつうの使いかたをしていたのとである。それに加えて、実態を知るためがまずあり、そのついでに楽しんでもいたのかもしれない。どれが本当なのかは分からないし、とくにどうでもよいことであるのはたしかだ。