他国の大統領を強く支持することとグローバル化の影響―空間と時間の圧縮

 日本にとっては他国の大統領であったドナルド・トランプ氏を日本の国民の一部が強く支持する。なぜそうしたことがおきるのだろうか。そこにはさまざまなわけがあるのにちがいない。それにそれぞれの人の自由な自己決定の権利に任されていることがらではある。そうした中でそこにはグローバル化が関わっているのがあるかもしれない。

 グローバル化がおきていることで世界のさまざまな国どうしがつながり合う。世界の中の空間と時間が圧縮される。距離が縮まり、ものごとの進みぐあいが速まって行く。

 よいことかそれとも悪いことかはさしあたっては置いておけるものとすると、世界がグローバル化していることで世界の中の空間と時間が圧縮されている。そのことによって日本とアメリカとの距離が縮まることになり、日本にとってアメリカのできごとは他国のことであったとしても他人ごとやよそごとだとは必ずしも言えなくなる。人によってはそうしたとらえ方がなりたつ。

 日本にとってアメリカのできごとは他国のことではあるが、それは遠いことであるのとともに近いことでもあり、二重性がある。遠さがあるのとともに近さがあることから二重性がおきてきて、遠いけど近いとか近いけど遠いといったことがおきてくる。このさいにアメリカでおきていることをとらえるあり方が雑になってしまうことがあるからそれにはなるべく気をつけて行きたい。あまりアメリカのことを単純化しすぎないほうがよいかもしれない。

 アメリカのことを単純化しすぎてしまうと、そこに肯定性の認知のゆがみがはたらく。肯定性の認知のゆがみがはたらくことで、アメリカの大統領の選挙で不正があったとするのであれば、そこに強い確証がおきてくる。強い確証をもつと、まちがいなくアメリカの大統領の選挙で不正があったのにちがいないとすることになる。

 強い確証をもつことによって、それが強い信念と化す。その信念は補強されることによってますます強くなることはあったとしても、その中に含まれているおそれがあるまちがいがとり除かれることはされづらい。補正や修正がされづらい。信念の中に含まれているおそれがあるゆがみがそのままにされてそれがとり除かれることがないままにそれが教義(dogma、assumption)と化す。

 教義と化してしまうとそれが真であることがうたがわれなくなる。そこをいまいちどあらためて立ち止まってみるようにしてうたがってみることがあったら肯定性や確証の認知のゆがみを改めやすい。信念の中に含まれているゆがみが大きくなりすぎるのを防いで、それを少しでも小さくして行く。

 グローバル化によって空間と時間が圧縮されることがわざわいすることがあるから、それになるべく気をつけるようにしたい。日本とアメリカとの距離が縮まっているのはあるとしても、アメリカのことを単純化しすぎないようにして、アメリカでおきていることはこうなのだといったように決めつけないようにする。アメリカでおきていることについて肯定性や確証の認知のゆがみがはたらきすぎないようにして行きたい。

 アメリカのことを一面性でもってして見てしまうと単純化しすぎてしまうのがあるからそうなることをできるだけ防げたらよい。一面性でもってしてとらえられるほどアメリカは単純ではないだろうから、たった一つの面だけではなくていろいろな面をもっていることをくみ入れて行きたいものである。たった一つの面だけで単純化してしまうとその面のもつ確からしさが心もとないものになる。

 日本からアメリカのことを知ることには制約がつきまとう。制約があることをくみ入れられるとすると、アメリカでおきていることはこうなのだとあまり強く言い切ることはできづらい。よほどアメリカのことに深く精通しているのでないかぎりそこにはあやふやさや不たしかさがつきまとう。こういう見かたもできればそうではない見かたもできるといったことになり、それにくわえて時間が流れることによってものごとは変化や転化して行く。いろいろなものどうしが解きほぐしがたいほどにからまり合っている複雑系(complex system)によっているので先行きをきれいには見通しづらい。

 一つの面だけだと確からしさが心もとないのがあるから、できるだけいろいろな面に触れるようにしていって、投資でいわれるところの危険性を分散(risk hedge)させておいたほうが少しは安全だろう。一つのかごにぜんぶを入れるな(don't put all your eggs in one basket)とことわざでは言われるのがある。たった一つの面だけにすべてをかけると危険だから、ひきょうではあるかもしれないが自分の持ち分をいろいろなところに分散させるようにしたほうが無難なのはある。

 参照文献 『一冊でわかる グローバリゼーション a very short introduction』マンフレッド・B・スティーガー 櫻井公人(きみひと)、櫻井純理(じゅんり)、高嶋正晴(まさはる)訳・解説 『反証主義』小河原(こがわら)誠 『「複雑系」とは何か』吉永良正 『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』飯田泰之(いいだやすゆき) 『幸・不幸の分かれ道 考え違いとユーモア』土屋賢二 『超常現象をなぜ信じるのか 思い込みを生む「体験」のあやうさ』菊池聡(さとる) 『超常現象の心理学 人はなぜオカルトにひかれるのか』菊池聡