いまの政権に、記者が投げかける質問の質についてあれこれ言う資格があるとは言えそうにない

 記者がとんちんかんな質問をしてくる。官房長官は、それをいけないことだと言う。

 たしかに、記者が投げかける質問が、よいものか悪いものかというのはあるだろう。それは質問の質についてのことだ。質問の質をうんぬんするためには、そのもととして、質問にまともに受け答えをしていなければならない。

 どういった質問であっても、答えられるものである限りにおいて、できるだけまともに投げかけられた質問に受け答えることによってはじめて、質問の質をうんぬんできるようになる。官房長官やいまの政権にこれができているのかというと、まったくできているとは言えそうにない。とくにひどいのは官房長官というよりは首相だ。

 質問を投げかけるほうが有利で、受け答えるほうが不利なのはじっさいにはあるが、受け答えるほうである官房長官やいまの政権が、まともに質問に受け答えることができていない。信号無視話法やご飯論法やすれちがい答弁ばかりしている。問われたことにかみ合っていないことを言うものだ。

 説明をするさいに、こうだからこうだというふうに、結論とそのわけ(why と because)を直線で言うとわかりやすい。これとは逆に、えんえんと堂々めぐりに持ちこむのが円のようにぐるぐると回る説明である。いまの政権はぐるぐると回る円の説明に持ちこむことが多い。時間や労力を無駄に空費するもとになっている。

 いまの政権は、記者のことをとやかく言うよりも前に、自分たちが信号無視話法やご飯論法やすれちがい答弁をしていることをまず改めるべきである。自分たちがまともに受け答えることができてからはじめて、質問の質をうんぬんするという順番をふんでほしい。この順番によらなければ、そもそも質問の質などわからないはずである。とんちんかんなのはいまの政権のほうだと言いたい。記者が一〇〇パーセント正しいとは言えないにしてもだ。

 参照文献 『論理パラドクス 論証力を磨く九九問』三浦俊彦 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信 『「六〇分」図解トレーニング ロジカル・シンキング』茂木秀昭