いまの日本の首相よりも、ロシアの大統領のほうが、日本のことをよくわかっているような気がしないでもない

 日本は北方領土をロシアから返してもらおうとしている。それについてロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、日本をけん制することを言っている。日本の沖縄県アメリカ軍基地が多くあることを引き合いに出している。

 沖縄県ではアメリカ軍の基地の建設に反対の声が少なくないが、それでも日本の政府やアメリカは強引に基地の建設をおし進めようとしているのだ。沖縄県において、反対の声の民意を無視してまで基地の建設をおし進めているのは、日本に民主主義があるかが疑わしいし、主権があることも疑わしい。プーチン大統領はそうしたことを言っている。

 日本は北方領土の島に支援をしたことについて、感謝はしている。北方領土の島にすむ住民はそう言っている。日本には感謝はしているが、北方領土の島が日本のものになるというのなら、日本とは戦うつもりだ。住民の中にはそうした気持ちを持っている人がいるのだと報じられている。

 領土の問題にはくわしくはないのだが、日本は北方領土の四島のうちで、まずは二島を返してもらおうとしているようだ。その二島を返してもらうのすらあやしい雲行きだ。

 そもそも北方領土の四島は日本のものなのかというと、これらが日本のものであるばかりではなく、その四島を含めてさらに多い、千島列島の全体が日本のものであったという。日本としては、北方領土の四島のみならず、それを含めてさらに多い、千島列島の全体をロシアから返してもらうことができるのだ。理想論としてはということだが。

 ロシアにたいして日本は大きく出て(というか小さく出ずに)、北方領土の四島だけではなく、それよりも多く、千島列島の全体を返してもらうように主張するのはどうだろうか。もともとは日本の領土だったのだから、それを主張してもとくにおかしいことはないだろう。

 いまの首相による政権は、まずは二島を返してもらおうということのようだが、これは千島列島の全体を返してもらうということからすると、四島に譲歩しているところにさらに譲歩していることになるのではないだろうか。譲歩の譲歩である。島を返してもらうことを話し合うのであれば、二島をまずというのではなく、四島というのでもなく、千島列島の全体を返してもらうということも選択肢の中に入れておいたほうが、交渉にとってはよくはたらくことが見こめる。

 参照文献 『日本の「運命」について語ろう』浅田次郎