ウェブのうわさをツイッターでツイートしたことで、大学の教授は与党の政治家から裁判でうったえられたそうだ

 自由民主党の幹事長は、かつて旧統一教会の関連団体に所属していたことがあると、大学の教授がツイッターでツイートをしたところ、自民党の幹事長は裁判でうったえた。

 自民党の幹事長が大学の教授を名誉毀損(きそん)でうったえたことは、ふさわしいことなのだろうか。色々に見られるのはあるかもしれないが、そうとは言えそうにない。

 自民党の幹事長は公人なのだから、公人の名誉権は制限されるのはやむをえない。それを承知で公人になったのだと見なせるから、自分(幹事長)の名誉よりも表現の自由の方をより重んじるべきである。

 大学の教授は、ウェブで言われていたうわさをツイートしたという。うわさをツイートしたのであれば、わざと嘘をツイートしたとは見なしづらく、そこに非があるとは見なしづらい。明らかに事実とはちがうとわかっていたのにも関わらずあえて嘘をツイートしたとは言えないものだろう。

 大学の教授には大きな非があるとは言いがたい。もしツイートの内容が事実ではなくて嘘であるというのであれば、自民党の幹事長が自分で説明責任を果たせばよいだけである。弁明の機会が持てるのだから、自分で説明すればよく、大学の教授をうったえるのは適しているものではない。

 ウェブで言われているうわさがまったくの嘘であるのなら、幹事長の言っていることが正しいことになるが、うわさが当たっているということはまったくないことではない。うわさはまったくの嘘だという幹事長の見解は、非の打ちどころがないほどに絶対に正しいとまでは言い切れない。もしかすると、たとえ万が一というくらいのことであったとしても、ついうっかり自分でかん違いしているということもまたある。

 幹事長だけに限ったことではなく、一般論ということではあるが、一般に政治家はカタリを言うものである。政治家は嘘を言うことが少なくない。むしろ、嘘を言わないと政治家として日本の政治の世界では上には立てない。いまの(これまでを含む)日本の政治の世界を見ればそれはほぼ明らかだろう。政治の世界だけではなく、役人による嘘もまたこれまでに多くつかれてきた。

 政治家や役人による嘘は、小さくてささいなことであればまだしも、許しがたいほどひどいものが少なくなかった。そのさいたるものが、戦時中に見られた大本営発表だ。政治家や役人がつく嘘やごまかしで、国がおかしくなることがじっさいにおきたのであって、それは現在進行形(現在進行中)だ。過去の話ではないし、終わったことだとも言えそうにない。それがあるので、公人である政治家が言うことをそのままうのみにできるかと言えば、それは難しい。少なくとも一つの文脈としては疑える。

 参照文献 『名誉毀損 表現の自由をめぐる攻防』山田隆司(やまだりゅうじ) 『政治家を疑え』高瀬淳一