出版社と危機管理(危機からの回避ではなく危機への対応がいる)

 出版社が出している売れている商品(本)を批判する。それをした作者が、その出版社からしめ出された。その売れている本は、ウェブのウィキペディアなどから無許可で勝手に引用しているとの疑いがもたれているものなのだ。

 出版社というのは利潤を追い求める営利組織だが、それとともに文化活動を行なっているのでもあるのだから、ふつうのより以上の企業倫理や社会的責任が求められる。出版社が出した売れている本に批判を投げかけた作家を自社からしめ出すのはおかしいことである。開かれたあり方とは言いがたい。

 いくら売れているからといって、不正が疑われている本を出版しているのだから、それについての批判を出版社は受けとめるようにするべきである。でないと文化活動を行なう資格(資質)があるとは言いがたい。出版社は、投げかけられている批判を受けとめて、危機管理を行ない、危機から回避するのではなくそれにまともに対応することがのぞましい。

 本が売れない時代だから、出版社はたいへんなのはあるかもしれないが、それはそれとして、よい商品を売るように努めることはしてほしいものだ。このさいのよい商品というのは、効率よく大量に売りさばくのではなくて、適正な中身にすることがいるということだ。効率よく大量に売りさばいて、とにかく多く売れれば勝ちみたいなことには賛同できづらい。かた苦しいことを言ってしまうのはあるが、(ウェブのウィキペディアなどから不正に引用することなどによって)要領よくてっとり早くつくった商品は、中身がよいものにはなりづらい。

 参照文献 『危機を避けられない時代のクライシス・マネジメント』アイアン・ミトロフ 上野正安 大貫功雄訳