日本政治における薬と毒の矛盾:薬としての(消費税)減税

 減税をせよ。税をへらせ。

 とくに、消費税の減税をもとめる声が多くなってきている。

 多くの人たちが消費税の減税を求めているのだから(so what?)、それがなされるべきなのだろうか。

 政治家の中でも、与党と野党において、消費税の減税をいうことが増えてきている。

 なんで政治家たちが、与党でも野党でも、消費税の減税を言い出しているのかといえば、それが薬に当たるからだろう。

 このさいの薬とは、たんなる薬なのとはちがう。現代思想でいわれる薬と毒の転化(pharmakon)だ。

 本当にきちんときく薬なのが、消費税の減税なのかといえば、そうとは言い切れそうにない。きくようでいてきかない薬の見こみがある。はじめは薬のようであったとしても、あとになって毒に転じてしまう。

 なんでいま、与党でも野党でも、おおくの政治家たちが、消費税の減税を言い出しているのかといえば、それが薬に当たるからだ。薬にすがっている。薬を求めるのが強いのがあり、そうしてみると、つじつまがやや合う。

 みんながいっせいに一つの薬にとびつく。一つの薬にむらがっているのが、いまの日本の政治だろう。こぞって、わらわらと、与党でも野党でも、政治家たちが薬にひきつけられている。

 ひきつける力がすごく強い薬なのが、消費税の減税だ。多くの政治家たちが、ひきつけられている。なんで多くの政治家たちがひきつけられているのかといえば、政治家にとってのどから手が出るほどほしいものなのが票とお金だからだろう。

 たとえあとになって毒に転じるのにしても、そんなことはどうでもよいから、さしあたっていまきく強い薬がほしい。今きくのであれば、あとで毒に転じてもかまわない。長い目で見た利益なんかどうだってよい。短い目で見た利益だけが、政治家(政治屋)が求めることである。

 はたして、消費税の減税は、本当にきく薬なのだろうか。きかない薬なのだとしたらよい薬なのとはちがう。あとになって毒に転じるのだとしたら災いをもたらす。

 すごいよくきく薬は、そのぶんだけ副作用が強い。利益が高いのであれば、そのぶんだけ危険性もまた高いことが多いのがある。強いはたらきをもつ薬は、きまって副作用もまた強いのがある。

 きちんとしたうでをもつ医者だったら、ふさわしい薬を出せる。日本の政治では、きちんとした医者はほとんどいなくて、やぶ医者だらけだ。きびしく見てみれば、やぶ医者の政治家だらけなのがいまの日本の政治であり、きかない薬を出している。あとで毒に転じてしまう。

 もしも本当によくきく薬なのが消費税の減税なのだったら、それはそれでよいことだ。とくにそれを否定する理由はないから、その薬が用いられてよいことになる。きくのではなくて、きかなかったり、まちがっていたりしたら、いったい誰がその責任をとるのかがある。

 無責任の体系のようになっているのが、政治家による消費税の減税のうったえだ。かりに消費税の減税をやるのにしても、いったい誰が責任を引き受けるのだろうか。責任の所在がはっきりとしていないと、いざとなったらだれも責任をとらないことになり、無責任になる。

 財政にしっかりと責任をもつことがいるのとともに、いざとなってまちがっていたさいに、消費税の減税について、だれが責任をとるのかを、はっきりさせることがいる。いざとなって失敗したさいに、責任をとらないで、ほかの人に責任をとらせる。

 責任はほかの人にとらせて、いいとこ取りをしようとしている政治家が、日本には多すぎる。ちゃっかりといいところだけを自分でとろうとしている政治家が多く見うけられる。人から好かれたい。きらわれるのをこばむ。好かれなくて、きらわれるのをいとわないのは、毒だ。

 のぞましいのは。消費税の減税が、もしも本当によくきく薬だったさいに、その手がらは手ばなす。手がらを自分のものにはしないで、ほかの人(政治家)にあげてしまう。もしも消費税の減税がきく薬ではなくて、大きな失敗がおきたさいに、その責任は自分がぜんぶ引き受けて行く。

 よいことがあったらほかの人にあげてしまい、悪いことがあったらぜんぶ自分が引き受けるといったような政治家がいたら、のぞましいあり方だ。理想論としてはそうだけど、現実論としてはその逆の政治家が日本には多くいる。

 きびし目に見れば、政治家には無責任なところがあるから、そこをせめてもうちょっと改めるようにして、薬と毒の転化をくみ入れることがいる。いまの日本の政治家の多くが求めるような薬は、やがて毒に転じてしまう。ほんとうにふさわしい薬(短期ではなくて長期の利益になる薬)を、いまの日本の政治家の多くが求めているのかといえば、そこには大きな疑問符がつく。

 参照文献 『カルチュラル・スタディーズ 思考のフロンティア』吉見俊哉(よしみしゅんや) 『逆説思考 自分の「頭」をどう疑うか』森下伸也(しんや) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『「責任」はだれにあるのか』小浜逸郎(こはまいつお) 『法哲学入門』長尾龍一 『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』西成活裕(にしなりかつひろ) 『シンクタンクとは何か 政策起業力の時代』船橋洋一 『政治家を疑え』高瀬淳一 『信頼学の教室』中谷内一也(なかやちかずや) 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『「説明責任」とは何か メディア戦略の視点から考える』井之上喬(たかし)