イスラエル vs パレスチナ: 階層(class)の差と本質のありどころ

 パレスチナに暴力をふるっているのがイスラエルだ。

 イスラエルははたして正しいことをやっているのだろうか。それともまちがったことをやっているのだろうか。

 かりにイスラエルが正しいことをやっているのだとするのにしても、それはあくまでも構築されたものだ。人為や人工に構築されたものであり、自然なものではない。構築主義からはそうできる。

 イスラエルについてを脱構築(deconstruction)してみる。一からつくり直す。そうしてみると、イスラエルは本質なのではない。本質なのはパレスチナだ。

 なんでイスラエルは本質なのではないのかといえば、階層(class)において優位に当たるからだ。劣位の階層なのがパレスチナであり、本質に当たる。負に当たるものなくして正に当たるものなしだ。関係の第一次性(the primary of relation)である。関係主義からはそうすることがなり立つ。

 パレスチナは本質に当たることから、何々化としてみたい。パレスチナ化だ。

 悪玉化される。可傷性(vulnerability)をもつ。パレスチナ化すると、贖罪(しょくざい)のやぎになる。贖罪のやぎ(scapegoat)になっているのがパレスチナだ。

 悪玉化される度合い(scapegoatability)が低いと、パレスチナ化しない。イスラエルは優の階層に当たるので、悪玉化される度合い(goatability)がそこまで高くない。

 パレスチナは劣の階層に当たるので、悪玉化される度合いが高い。へんな言い方ではあるけど、パレスチナは、パレスチナ化されているのである。

 かつてにおいて、イスラエルの民族であるユダヤ人は悪玉化される度合いがうんと高かった。goatability がうんと高かったので、ユダヤ人はパレスチナ化されたのである。

 ユダヤ人だから排除されたのであるよりも、かつてにおいてユダヤ人は goatability が高かったので排除されたのである。goatability が高いのは、パレスチナ化されることを示す。

 いまのイスラエルは goatability がそこまで高くはないので、排除されづらい。排除する主体になってしまっている。暴力をふるう主体だ。

 かつてにおいてはイスラエルの民族であるユダヤ人は排除された。ユダヤ人はパレスチナ化されていたのである。欧州において危機がおきる。欧州にかぎらず、どこの地域であったとしても、そこで危機がおきると、ある人々(や地域)がパレスチナ化される。かつての欧州だったら、ユダヤ人がパレスチナ化された。

 地域では、東洋では日本があるけど、日本でもパレスチナ化がおきる。たとえば在日の人たちはパレスチナ化されている。在日の中には広くいろいろな外国の人たちを含む。クルド人をふくむ。ほかには沖縄県の人たちもパレスチナ化されている。

 性別でいえば、女性はパレスチナ化される。パレスチナ化は女性化といってもよい。なぜかといえば、性別において劣の階層に置かれるのが女性だからである。男性は優の階層だ。大づかみにとらえればそうとらえることがなり立つ。

 いまイスラエルパレスチナでぶつかり合いがおきているけど、そこで構築されたものを脱構築してみる。そうすると本質に当たるのはイスラエルではなくてパレスチナであるのが見てとれる。パレスチナ化がおきている。パレスチナ化は、イスラエルの地域にかぎったことではない。日本でもおきているのである。

 日本でもおきているのがパレスチナ化なのだから、イスラエルパレスチナのぶつかり合いは決して他人ごとだとは見なせそうにない。たとえば国どうしの関係で日米があるけど、アメリカは日本のことをパレスチナ化しているふしがある。アメリカに従属しているのが日本のありようだ。日米でいえば、アメリカは本質に当たるものではない。

 日本の政治では、与党である自由民主党は勝ちつづけている。自民党の一強になっていて、野党ははなはだ弱い。日本の政治では自民党は本質に当たるものではない。野党がパレスチナ化されてしまっている。

 本質に当たるパレスチナ化されているものに目を向けてみて、そこに光を当てるようにしたい。goatability が高いとパレスチナ化されてしまう。

 イスラエルの地域にかぎらずどこの地域であったとしても、そこの地域において goatability が高いものがパレスチナ化することになる。排除の遍在(へんざい)だ。弱い人たちや弱い地域が排除されることになる。排除がなされるのを防ぐ。包摂して行く。パレスチナ化されたものを、いかに包摂することができるかが大事だ。

 参照文献 『脱構築 思考のフロンティア』守中高明 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『カルチュラル・スタディーズ 思考のフロンティア』吉見俊哉(よしみしゅんや) 『逆説思考 自分の「頭」をどう疑うか』森下伸也(しんや) 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫構築主義とは何か』上野千鶴子(ちづこ)編 『アイデンティティ(identity) / 他者性(otherness) 思考のフロンティア』細見和之(ほそみかずゆき) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『暴力 思考のフロンティア』上野成利(なりとし) 『橋下徹の問題解決の授業 大炎上知事編』橋下徹ナショナリズム 思考のフロンティア』姜尚中(かんさんじゅん) 『社会階層 豊かさの中の不平等』原純輔(じゅんすけ) 盛山(せいやま)和夫 『「野党」論 何のためにあるのか』吉田徹 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『社会的排除 参加の欠如・不確かな帰属』岩田正美 『現実はいつも対話から生まれる 社会構成主義入門』ケネス・J・ガーゲン メアリー・ガーゲン 伊藤守監訳、二宮美樹翻訳統括