共産党が、東京都の行政をになう。
蓮舫(れんほう)氏が都知事にえらばれたとしたら、日本共産党の政策が行なわれてしまう。良くないことになる。そう言われているのがある。共産党から支援されているのが蓮舫氏である。
新しく蓮舫氏が都知事になったら、共産党の政策がなされることになるのだろうか。悪い政策が東京都でなされることになるのだろうか。
どういうことが悪いのかがある。
何が悪いのかといえば、共産党の政策が東京都において行なわれることではない。それはとくに悪いことだとはできそうにない。良いかもしれないし、悪いかもしれない。
ふ分けをして見るようにしたい。
ふ分けをしてみると、事実と価値の二つに分けられる。たとえ事実についてを知ったのだとしても、そこから自動では価値は出てはこない。価値についてはまた別の話なのである。
ナチス・ドイツがやったように、ユダヤ人だから悪いとしてしまう。そういったところが、日本における共産党のあつかいにはある。共産党だから悪いといったあつかいになっている。
あくまでも事実にすぎないのが、ユダヤ人であることだ。事実から自動で価値をみちびくのはよくない。自然主義の誤びゅうにおちいってしまう。
どの政治家が共産党から支援されているのかは、事実だ。その事実をもってして、自動で価値をみちびくことはできそうにない。
東京都でどういった政策がなされるのかがある。右派の政策がなされたり、左派の政策がなされたりする。共産党であれば、左派の政策をなす。
与党である自由民主党と近いのが、いまの小池百合子都知事だ。小池都知事がなすことであったとしても、右派の政策もあれば、左派の政策もある。ぜんぶが右派の政策なのだとは見なせそうにない。中には左派の政策もふくむ。たとえば、少子化のための政策などである。
あたらしく都知事に蓮舫氏がなったとして、それがとんでもなく悪いことなのかは定かではない。たとえ共産党から支援されているのが蓮舫氏だからといって、それをもってしてとんでもなく悪い都知事が新しく選ばれたとは見なしづらいのである。
どういう人が新しい都知事に選ばれるのかは、選挙を行なうことによる。いちおう民主主義の手つづきをふんでいる。いまの小池都知事もまたいちおうは選挙で選ばれている。蓮舫氏が都知事になったらまずいのであれば、小池氏が都知事になるのもまたまずいはずだ。どちらも選ばれる手つづきは同じであり、共通点をもつ。
だれが都知事になったとしても、かんぜんな正統性があるとはできづらい。ある人は満足するけど、ある人は不満をもつ。それはしかたがない。たとえば蓮舫氏が新しく選ばれれば、それに満足する人だけではなくて、不満をもつ人も出てくる。不完全な正統性にとどまる。
いまの日本では、十分に民主主義がうまくいっているとはできづらい。民主主義がうまく行っていないところがあるけど、それによるようにして行けば、右派の政党でも左派の政党でもかまわない。
ちゃんと民主主義によるようにすれば、右派の政党が権力をとってもよいし、左派の政党が権力をとってもよい。共産党の政策が、東京都においてなされてもよいのである。
かんじんなのは、とちゅうの過程(process)において民主主義がしっかりとなされているかどうかだろう。絶対のものではなくてあくまでも相対のものにとどまるのが民主主義だ。すごい民主主義がうまく行っているのだとしても、絶対ではなくて、相対としてましな人が選ばれるのにとどまる。
相対にとどまるものなのが民主主義なのだから、だれが都知事に選ばれたとしても、絶対の価値はもたない。すべての人を満足させることはできないのである。いまの小池都知事は、絶対の価値をもってはいないから、まちがいなくよい政治家なのだとするのは行きすぎている。事実としては都知事であるのにしても、そこから自動で価値をみちびけないのである。
実体としてその政治家が良いか悪いかは、それぞれの人の見なし方による。お金でいえば、その政治家は良貨かもしれないし悪貨かもしれない。民主主義においてとちゅうの手つづきがうんとしっかりとしていれば、とんでもない悪貨が選ばれるのは防ぎやすい。
形式論なのが民主主義なのだから、まちがいなく実体としてよい政治家が選ばれる保証はないのである。実質論はまた別の話になってくる。実質としては、悪いものがよいものを追いやってしまう。悪貨が良貨を駆逐(くちく)する。グレシャムの法則だ。
実質だけをとりあげれば、悪い政治家(たとえばアドルフ・ヒトラーのような)が選ばれることがあるから、それに気をつけたい。競争(勝負)でやっかいなのは、誰かが勝たないとならないことなのである。作家のジョージ・オーウェル氏はそのように言う。
参照文献 『法哲学入門』長尾龍一 『本当にわかる論理学』三浦俊彦 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『逆説思考 自分の「頭」をどう疑うか』森下伸也(しんや) 『カルチュラル・スタディーズ 思考のフロンティア』吉見俊哉(よしみしゅんや) 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『信頼学の教室』中谷内一也(なかやちかずや) 『差別原論 〈わたし〉のなかの権力とつきあう』好井裕明(よしいひろあき)