ロシアにとっての友好国と、その反対の非友好国―非友好に着目してみる

 ロシアは、友好国とは話し合いをやっている。

 友好国とはちがって、ロシアにとっての非友好国はどのようなものなのだろうか。

 肯定によるのが友好国で、否定によるのが非友好国だ。

 肯定ではなくて、むしろ否定のほうが重要だ。否定は、たんに消極なだけではなくて、それなりの積極性がある。

 肯定にではなくて、否定に目を向けて、それに着目してみると、否定のものこそが重要なのが浮かび上がってくる。

 否定のところの、自国にとっての非友好国をどのようにあつかうのかによって、民主主義がなせるかどうかの分かれ目になる。

 おたがいに協調によれるのが友好国だけど、対立し合うことになるのが非友好国だ。

 対立し合うのは、そこに政治がおきることである。

 おたがいに協調し合うものどうしである友好国とは、政治はおきない。政治にはならない。

 対立があることによってはじめて政治がおきるけど、そこには危なさがある。さまざまなものの中で、政治の対立がいちばん激しくなるのだと、学者のカール・シュミット氏は言う。政治の対立は、いちばん激しくなるものであり、対立者である敵をほろぼそうとすることになりがちだ。

 いろいろな対立がある中で、政治の対立はいちばん激しいものになりがちだから、それを和らげる工夫をしたい。

 肯定か否定かだと、二つのうちのどちらかになるから、それをさらに分けてみたい。否定をさらに分けて、否定の肯定と、否定の否定にできる。否定の積極と、否定の消極だ。

 民主主義では、非友好国があるとして、それを敵だとしてしまうと成り立たない。非友好国を敵だとしてしまうと、非民主主義になる。対立する者を、否定の消極でとらえることになる。

 否定があるとして、それを積極にするか消極にするかがあり、ロシアはウクライナを消極でとらえているから、否定の消極だとしている。それで戦争をおこすことになっている。

 否定なのをさらに分けて、積極と消極があるのだとして、そこに積極性を見いだす。その努力をロシアがやっていれば、戦争をおこすことを避けられた。

 友好国は肯定だけど、非友好国は否定で、否定は消極なだけだとしてしまう。そこに積極性を見いだそうとしない。それだと非民主主義になり、原理主義におちいることになる。

 戦前の日本と同じように、ロシアにはねばりが欠けているのがうかがえる。戦前の日本は、いさぎよさによって、まちがった方向に国が行ったが、ロシアもまたいさぎよさによることで、戦争をやることになった。まちがいをおこしているのである。

 友好なのは良いことで、非友好なのはよくないことであるかのようだけど、非友好なものにこそ、民主主義の見こみがおきる。非友好なものをどのようにとらえて、どのように見なすのかによって、民主主義の政治ができるのかどうかの分かれ目になる。

 非友好なのは悪いのかといえば、そうとは言い切れず、それを敵にしてしまうとまずい。敵にしてしまうと、それをほろぼそうとすることになり、戦争がおきるおそれがある。敵(enemy)にしてしまわずに、競争の相手(rival、competitor)にすることができれば、民主主義がなりたつ。

 敵とのあいだに激しい対立がおきて、戦争になると、西洋の弁証法でいわれる、正と反とのあいだのぶつかり合いがつづく。正と反が、合に止揚(aufheben)されないままになる。

 正が友好で、反は非友好だけど、正と反に分かれるのは、それそのものがただちに悪いとはかぎらない。正と反に分かれれば、反が非友好になるけど、そこから、反を敵だとしてしまうと、戦争がおきかねない。反をよき競争の相手だとできれば、民主主義がなりたつ。

 戦争だと、非友好の敵を排除しようとすることになり、正と反のぶつかり合いがつづく。ぶつかり合いがいつまでも終わらない。戦争の反対の平和は、民主主義によるようにすることであり、非友好の対立者を客むかえ(hospitality)することだ。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、戦争をやっているが、そうではなくて、客むかえをやるようにするべきだった。そうすれば民主主義がなりたったのである。

 友好な人や国のあつかいはまちがえづらいが、非友好のあつかいはまちがいやすく、そこをまちがえたのがプーチン大統領だろう。非友好にこそ、むしろ重要さがあり、そこの意味あいが大きいのを、プーチン大統領は見のがして、軽んじたのである。国の政治の指導者としてやるべきこととは反対のことをなしている。

 参照文献 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『原理主義と民主主義』根岸毅(たけし) 『政治の見方』岩崎正洋 西岡晋(すすむ) 山本達也 『リーダーは半歩前を歩け 金大中(きむでじゅん)というヒント』姜尚中(かんさんじゅん) 『暴力 思考のフロンティア』上野成利(なりとし) 『対の思想』駒田信二(しんじ)