国葬と、日本の国の創造力―どれくらいの創造力が安倍元首相にはあったのか

 すごい政治家だったから、安倍元首相の国葬が行なわれるのだろうか。

 どれくらいの創造性(creativity)を、安倍晋三元首相は持っていたのだろうか。

 日本の国を、右(右派)と左(左派)の半分に分けてみたい。

 右と左だったら、左のほうが創造性が高い。右にきびしく、左に甘い見かたではあるけど、そのように見なしてみたい。

 日本の中で、右は中心に置かれている。左はわきに置いやられている。多数なのが右で、少数なのが左だろう。

 わきにいる少数のもののほうが創造性が高いことが多い。中心にいる多数のものは創造性があまりないことがしばしばある。革新は、少数からおきることが少なくない。

 できるだけ創造性を高めるためには、右と左をまんべんなく使う。まんべんなく活用して行く。どちらかだけにかたよっていると、創造性が低まってしまう。

 右だけしか使えていなかったのが、安倍元首相だった。左を使えていなかった。左は排除してしまっていたのである。

 右だけにしかよっていなかったから、安倍元首相の創造性は低かった。

 右によっていたのが安倍元首相だったのがあり、いっけんすると、それによって日本がうまく行っているかのようではあった。日本がより良くなっていっているかのようではあった。

 あらためてよく見てみると、左が、日本を支えていたのである。右である安倍元首相が、日本を保たせていたのではない。左があったからこそ、まがりなりにも日本の国は持ちこたえられたのである。

 きびしい見なし方になってしまうのはあるけど、創造性が低くて、日本の国をこわしていたのが、安倍元首相のやっていたことだった。なぜ創造性が低かったのかといえば、右にかたよっていたためであり、右しか使えていなかった。

 日本の国には、右と左の資源(resources)があるけど、そのうちで、一部の資源しか使われていない。右の資源しか使われていないのである。左の資源が使われていないから、宝のもち腐れになっているのである。宝はあるけど、有効に使われていないのだ。

 資源はいちおうあるのだけど、それが十全に使われていない。使うためには、技術(skill)を持っていることがいるけど、その技術が安倍元首相にはなかった。技術が欠けていたのである。

 やらなければならないことがあって、それらにとり組んで行く。色々なやらないとならないことにとり組んで行くさいに、色々な技術を政治家は持っていることがいるだろう。その中で、もっとも重要なことの一つが、説明の技術だ。

 説明の技術は、かなめとなるものの一つであり、言葉の政治をやるのにいるものだ。この技術が安倍元首相は低かったのがあり、言葉の政治ができていなかったのはいなめない。権力にものを言わせて上から力で支配していた。

 いまの日本は、言葉の政治をやらないとならなくなっているが、それをやるのであるよりも、日本語をこわした。きびしく見れば、それが安倍元首相だったのである。政治でもっとも危ないのは、言葉をいい加減に使うことだ。うそを言う。白を黒と言う(黒を白と言う)。その危なさがおきたのである。政治の語り(カタリ)の危なさが深まっている。

 高い動機づけ(motivation)をもち、色々な問題にとり組んで行くのが理想だ。日本はいろいろな問題をたくさん抱えているけど、それらのほとんどは、放ったらかされている。先送りにされている。能動で問題にとり組むことがなされていない。問題から逃げるのが多かったのが、安倍元首相のときにはあった。

 少しでもものごとを片づけて行くには、動機づけの中では、内発の動機づけがいる。内発の動機づけは、たんにそれをやりたいからやるといったものだ。質である。人からほめられるとか、お金をかせげるとか、(選挙で)票を得られるとかは、外発の動機づけだ。動機づけで、もっぱら外発によっていて、内発が欠けていたのが安倍元首相だった。理性が退廃(decadence)していて、道具の理性になっていたのである。

 理想としては、動機づけは、内発と外発の二つが共にあるとよい。二つが共にあると、多重に支えをもてる。外発だけしかないと、内発が衰えてしまう。内発が弱まってしまい、外発の一重(いちじゅう)の支えだけになりやすい。一重の支えだと弱さやもろさがある。

 動機づけと技術と資源の MSR の三つの点から見てみると、それらのどれにもまずさがあった。三つのぜんぶにまずさがあったから、日本の創造性は高まらなかった。創造性が低かった。安倍元首相についてを創造性の点から見るとそう評価づけできる。かなりきびしく見たさいの評価だ。もっと甘い(つり合いをとった)見かたもできるのはある。

 参照文献 『創造力をみがくヒント』伊藤進 『武器としての〈言葉政治〉 不利益分配時代の政治手法』高瀬淳一 『日本語の二十一世紀のために』丸谷才一 山崎正和 『学ぶ意欲の心理学』市川伸一 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編