ロシアとウクライナの戦争と、上から下への指令―いろいろな指令

 ロシアがやっている戦争を、認知と評価と指令の三つに分けて見るとどう言えるだろうか。

 ロシアの国の中においては、八割より以上のロシアの国民が戦争をよしとしているという。ロシアがウクライナに戦争をしかけていることについて、ロシアの国の中ではよい評価づけが行なわれている。ロシアは戦争をやるべきだとする指令がとられている。

 戦争についての認知がおかしくなっているのがロシアではおきているとも言える。まともな認知がなされていない。ロシアでは自由な報道ができなくなっているから、まともな認知を持てない。戦争についての適した評価づけをすることができづらい。こうせよとかこうするなといった指令がおかしくなっている。指令が狂っている。または国民が自由に指令をすることができなくなっていて、上に従わせられるだけになっている。

 ロシアにかぎらず、日本の国の報道でも、まともな指令があるとは言えそうにない。報道の中で指令をするためには、記者が自分の思想や考えを持っていないとならないけど、日本ではそれがほとんどない。日本の報道は、認知と評価はいちおうあるけど、こうせよとかこうするなといった指令が欠けていることが多い。記者に自分の思想や考えがないから、上が言うことをたれ流しにしている。

 認知と評価しかなくて、指令が欠けている点では、ロシアと日本は似ている。認知と評価はいちおうはあるのにしても、その二つにもおかしさがある。おかしい認知とおかしい評価づけであることがしばしばある。

 ロシアがやっている戦争で、どういう指令をするべきなのかはいろいろにあげられる。指令としては、ロシアは戦争をやるべきではないとか、戦争をただちに止めるべきなのがある。

 ほかの指令としては、ロシアに戦争をしかけられているウクライナが、ロシアと戦うべき(戦いつづけるべき)なのかは、そこまで定かとはいえそうにない。ウクライナが自分たちの国の独立を守るために、ロシアと戦うべきなのかは、指令としてはどれくらい正しいものなのかはやや疑問である。

 国を絶対化したり、国が国家主義(nationalism)によったりするのには反対したいのがあるから、ウクライナがどうするべきなのかの、ウクライナにたいする指令ははっきりとしたところがよくわからないのがある。

 ロシアやウクライナではなくて、ほかの国にたいしてはどういう指令をとれるだろうか。大国であるアメリカや中国には、ロシアがやっている戦争にはっきりと反対して、戦争を止めるための最大限の努力をすることがいるだろう。

 アメリカは、ウクライナに武器を与えて、ウクライナを助けているようだけど、これはアメリカがなすべき指令としてまったくもって正しいとは言えそうにない。ロシアを批判しているのがアメリカだけど、それでこと足れりとするのでは、アメリカがなすべき指令としては不十分だ。

 アメリカにたいする指令としては、ウクライナに武器を与えたり、ロシアを批判したりするだけでは十分ではない。肝心なところの指令ができていない。核となるものとしては、アメリカがこれまでにやってきたいろいろな悪いことを、自己批判することがいる。

 ロシアが戦争をやっている中で、どういう指令をとることができるのかでは、いろいろな指令をとることができるのがわかる。戦争をやっているロシアにたいする指令をするだけでは足りず、アメリカにたいする指令や、中国にたいする指令などもしっかりとやらないとならない。

 視野を広げて見てみると、じっさいに戦争をやりはじめたロシアにたいする指令だけではなくて、ほかの国にたいしてもいろいろな指令をやらないとならない。いまは戦争が行なわれているから、ロシアにたいする指令が目だちやすくなっていて、それが顕在(けんざい)化しているが、そのいっぽうで目だちづらくなって潜在化している指令がいろいろにある。

 戦争を止めるようにするためには、こうするべきだといった指令がいろいろに言えるけど、そういった反戦や不戦や非戦の指令がとり入れられていない。好戦の指令が行なわれてしまっている。戦うのは正しいことなのだから、戦うようにするべきだといった指令になっているところがあり、戦うことがよしとされているふしがある。

 悪いものつまり敵にたいしてであれば、それと戦うことは正しいことだと言えるのだろうか。そうであるとすると、悪いものつまり敵との戦いはよいことだとする評価づけになり、戦うようにするべきだとする指令がとられる。

 ロシアが戦争をやっていて悪いのは、ロシアが悪いのであるのみならず、国が悪いのがある。国による認知と評価と指令を、そのままうのみにしないようにすることがいる。悪いとされているロシアにかぎらず、どの国であっても、国をうたがうようにして、国による認知と評価と指令を丸ごとうのみにしないようにしたい。

 戦争をやるべきだとしているのがロシアであり、その指令がロシアでは絶対化されている。ロシアでは、国による指令が権威化されている。国による指令が強制されていて、自由がなくなっている。日本でもロシアと同じようになっている。ロシアと同じように、国による認知と評価と指令が権威化されていて、自由がない。国による指令だけが正しいことになっているのがあり、ロシアと日本はどちらも非科学な国だといえる。

 参照文献 『三人で本を読む 鼎談書評』丸谷才一 木村尚三郎 山崎正和 『科学との正しい付き合い方 疑うことからはじめよう』内田麻理香 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『うたがいの神様』千原ジュニア 『権威と権力 いうことをきかせる原理・きく原理』なだいなだ