外国人には、人権や権利が与えられなくてもよいのか―憲法の改正がいるのか

 外国人に、基本の人権を認めるのかどうかは、憲法のうえでの議論がいる。憲法の改正をふくめた議論をしたうえで、どうするのかを決めることがいる。野党の党首はそうしたことを言っていた。この発言についてをどのように見なすことができるだろうか。

 たしかに、野党の党首が言っているように、日本の憲法では、あくまでも日本人に限定して、人権を保障していると言えるのがあるかもしれない。日本の憲法では、日本人であることを想定しているのがあり、そこに外国人が含まれているのかどうかははっきりとしていないかもしれない。

 その集団への参加の資格を得ることによって、その人にいろいろな権利が与えられることになる。これは市民権(citizenship)によるものだと言える。市民権を得て、その集団に正式に参加することが認められれば、いろいろな権利が与えられるが、そうではないのであれば、権利が与えられない。市民権を持っていない人は、権利もまた持たないことになる。

 日本の憲法では、人権を守ることが言われていて、それをじっさいになすために、統治機構のあり方が定められている。人権論と、統治機構論だ。日本人にたいしてはそれがとられているのだとしても、外国人にはそれがとられていないのだろうか。日本人についてと、外国人についてとで、憲法においてあつかいが対照と言えるほどに差がつくのだとはいえそうにない。

 憲法では、外国人にたいして、人権を守ることを禁じているのではないだろうし、人権を侵害することをすすめているのだともいえそうにない。外国人の人権を守ってはいけないとはいっていないのだから、外国人の人権を守るようにすることは、憲法を守りながらでも十分にできることだろう。

 新型コロナウイルスの感染がおきている中で、不要不急の外出をひかえるように言われるのがあるが、不要不急かそれとも必要で火急かを見てみたい。外国人の人権を守ることは、不要不急のことではなくて、必要で火急のことに当たる。必要で火急のことなのだから、すぐにそれが許容されることがいる。

 やってもやらなくてもよいが、できればやったほうがよいことであれば積極の義務だ。たとえやらなかったとしてもかならずしも悪くはない。積極の義務とはちがい、消極の義務は、それをやらないと他者に危害が加わるようなものであり、やらないとならないことだ。

 外国人の人権を守ることは、その人の生存の権利を守ることであり、これは消極の義務に当たることだと言える。消極の義務は、やらないとならないことであり、それをやらないのであれば、義務に反することになり、悪いことになる。義務をはたさない選択肢はない。

 日本の国の外にいて、外国の地で暮らしている人たちであったとしても、その人たちが人権を持っていないわけではない。その人たちの人権は守られるべきである。外国の地で暮らしている人たちであったとしても、人権を持っていて、それが守られないとならないのだから、日本の国の中にいる外国人であれば、それと同じか、なおさら人権を持っていて、それが守られるべきだろう。

 日本の国の憲法は、世界の中で特殊なものだとは言えず、普遍性をもつものだ。近代の立憲主義憲法なのが日本の憲法だから、日本人であったとしても外国人であったとしても、その普遍性が適用されるべきところがある。その普遍性をくみ入れてみると、日本人であれば憲法に守られて、外国人であれば守られないようだと、普遍性によらないことになり、特殊なあり方になってしまう。

 日本の国の憲法の効力がおよばないような、外国の地の人たちにたいして、日本の国が助けの手をさしのべるのは、どちらかといえば積極の義務に当たるが、それをすすんでやってもよいくらいであり、もっといえばやらないとならないくらいなのだから、それと同じか、それより以上のことが、日本の国の中にいる外国人には言えることになる。

 中国のウイグル自治区で、人権の侵害が行なわれているうたがいがあることにたいして、日本の国の中で声をあげるべきだと言われているのがあり、このことが意味するのは、人権についてのことが不要不急なのではなくて、必要で火急であることをしめす。日本の国の外であったとしても、人権についてのことは不要不急ではなくて必要で火急なことだと言えるから、日本の国の中であればそれと同じかそれより以上のことだと言える。

 日本の国の中で、外国人の人権が守られるようにするのは、日本の国に責任や義務があることだと言えるのがあり、その責任や義務を果たすようにするべきだろう。そうしなければ、日本の国が消極の義務をはたさないことになり、義務に反することになる。消極の義務をはたさないと、他者に危害が加わってしまうから、そこは義務としてはたさなければならない最低の線に当たることだ。

 参照文献 『貧困の倫理学馬渕浩二憲法主義 条文には書かれていない本質』南野森(しげる) 内山奈月 『現代倫理学入門』加藤尚武 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ)