総裁選と、言葉による政治―不利益分配の政治の不可避性

 総裁選が行なわれている。与党である自由民主党では四名の総裁選の候補者の政治家たちがたがいに競い合っている。

 どういった候補者が総裁選では選ばれるべきなのだろうか。人それぞれによっていろいろな見なし方があるのにちがいない。そのなかで不利益分配の政治をやる気が高い人が選ばれたほうがよい。そう見なしてみたい。

 ぼう大な借金をかかえているのが日本の国の財政だ。ばく大な借金が積み上がっていることから目をそむけずに、それにまともに目を向けて行く。不利益の分配をどのようにするのかを、国民にしっかりと説明して行く。言葉による政治がしっかりとできるような人が総裁選では選ばれるべきだ。

 政治においてもっとも危険なことの一つは、白いものを黒いと言ったり黒いものを白いと言ったりすることがまかり通ることである。これまでの与党である自民党の政治ではそれがおきてしまっている。言葉が壊れてしまっているのがあるから、それをきちんと立て直して行く。言葉を主とするようにして、それに力を入れて行き、説明責任(accountability)をはたして行く。新しく総裁選で選ばれることになる与党の自民党の政治家においてその点がかぎになってくる。

 これまでの与党の自民党の政治では、かげにかくれた形で不利益分配の政治が行なわれていたものだろう。国民にきちんと説明をせずに、うらでこそこそと不利益分配の政治をすすめて行く。一部のところに特権が生まれたり、一部のところに大きく不利益が押しつけられたりしてきている。

 経済学の基本の原則ではただで食べられる食事はない(There is no free lunch.)とされているのがある。お金が実る木はない(Money does not grow on trees.)から、その経済学の基本の原則からすると、不利益分配の政治を避けて通ることはできそうにない。国民にどのように公平に不利益を分配して、それぞれの国民が不利益を引きうけて行くのかをとり上げて行くことが欠かせない。

 どのように政治家を評価づけすることができるかの点では、言葉による政治をどれだけできるのかをあげられる。その点から新しく与党の自民党の総裁選で選ばれる政治家を見てみられる。これまでの与党の自民党の政治では、言葉による政治ができていない政治家が選ばれてきているから、これまでのていたらくよりもより上回るようであることがいる。政治において言葉が壊されてしまってきているのをどれだけ立て直せるのかが求められる。

 いろいろと液状化がおきてしまっていて、言葉や国の財政がおかしくなっているのがいまの日本の国だろう。交通の信号機でいうと、青は進めで赤は止まれだが、それが逆になってしまっていて、青は止まれで赤は進めだといったようなことがおきてしまっている。これは液状化がおきていることで、ふさわしい感じ分けや行ない分けや語り分けがなりたちづらくなっていることをあらわす。

 ふさわしい感じ分けや行ない分けや語り分けがなりたちづらくなっているなかでは、政治における適切さがなりたちづらい。液状化していることからそれがおきているものだろう。その行きつく先としては、へたをすれば日本の国そのものの破局や破壊といったことにいたりかねない。

 日本の国そのものの破局や破壊といったところにいたらないようにするには、液状化が進んでいっているのを少しでも食い止めて行きたい。政治において言葉や国の財政が液状化すると、へたをするとひどい害や損が国の中においておきることになる。悪くすれば大きな害や損が人々に降りかかってくることがあるから、そうならないためには、政治において言葉を立て直すようにして、説明責任をはたして行く。不利益分配の政治から逃げないようして、不利益の分配をどうするのかを探って行く。

 政治において言葉を大事にすることと、不利益分配の政治ができるかどうかが、液状化を少しでも食い止められるかどうかの大きな分かれ目になりそうだ。液状化に歯止めをかけて行くためには、そうとうに高度な言葉の能力を政治家がもつことがいるが、そうした高い能力をもった政治家は見あたりづらい。

 大衆迎合主義(populism)になってしまっているのがあり、耳に快く響いて受けがよい甘いことを言ったほうが人々により受け入れられやすい。現代思想で言われる薬と毒の転化(pharmakon)となっていて、薬が毒になる。耳に快く響く甘いことを言うことの裏にはわなつまり毒がある。じっくりと腰をすえてものごとにとり組んで行くような科学のゆとりが欠けている。

 参照文献 『武器としての〈言葉政治〉 不利益分配時代の政治手法』高瀬淳一 『あいだ哲学者は語る どんな問いにも交通論』篠原資明(しのはらもとあき) 『逆説の法則』西成活裕(にしなりかつひろ) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『日本国はいくら借金できるのか? 国債破綻ドミノ』川北隆雄 『財政・安保・領土、そして政治 「日本の液状化」を救う!』川崎隆司(りゅうじ) 『日本語の二十一世紀のために』丸谷才一 山崎正和 『「説明責任」とは何か メディア戦略の視点から考える』井之上喬(たかし)