ワクチンが広く行きわたりさえすればウイルスを抑えこめるのか

 ウイルスの感染が広がっている。それに手を打って行くさいに大事なことはいったいどういったことなのだろうか。

 ウイルスの専門家ではなくてしろうとだから言っていることがまちがっているかもしれないが、危機管理によるようにするのがある。危機管理では分散が基本とされている。できるだけ分散させる形で手を打って行く。危険性の分散(risk hedge)である。

 英語のことわざではこう言われているのがある。一つのかごにぜんぶの卵を入れるな(Don't put all your eggs in one basket.)。またこういったことも言われている。卵がかえる前にひよこの数を数えるな(Don't count your chickens before they are hatched.)。

 危険性を分散させていなくて、一つのことにしぼっているのが日本の政治では行なわれている。できることがあるのであればそれをできる限りぜんぶやって行こうとしているのではなくて、どちらかといえば、これさえあればとかこれさえやればといったあり方になっているものだろう。

 これさえあればとかこれさえやればといったさいに、そこで行なわれることがしっかりとした実質によるのではなくてうわべの形だけが整えられることが少なくない。とりあえず形だけはやっておくといったことになりがちだ。実質が欠けていることが多い。

 与党である自由民主党菅義偉首相は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が広がっている中で、おもにワクチンだけをたよりにしているのだという。ワクチンさえ行きわたればといったことで、それを主としてたのみにしているのである。

 ウイルスにはワクチンが有効なのはあるだろうが、それだけをたのみにしてしまうと危険性が分散されない。もっと危険性を分散させるようにして、ほかにできることを色々とやって行く。ほかにできることを色々にやっていったほうが、かりにたのみにしているワクチンがうまく行かなかったとしても、ほかのものが埋め合わせる役割を果たす。

 どれくらいの支点によって支えられるかがある。支点の数が少ないと安定性に欠けるが、支点の数が多ければ安定性が高まる。ワクチンだけを主としてたのみにするのは支点の数が一つだけといったことになるから安定性が高いとは言えそうにない。支点が一つだけしかないと、それがこけたら全体が総崩れすることになる。

 支点が一つしかなくて、ワクチンだけをたのみにしていることによって、ほかの色々な手をしっかりと打って行くことがおろそかになる。たのみにしているワクチンさえ効いてくれればすべてがうまく行くことが見こめるから、それがいちばん都合がよい。いちばん効率がよいのである。

 効率がよいやり方が上手く行けばそれでよいが、それがうまく行かなかったときはまずいことになる。効率のよさによるのではなくて、その反対に効率を悪くするようにして、科学のゆとりを持つようにして行く。じっくりと時間をかけてどのような手を打って行くのがよいのかを探って行く。できるだけ支点の数を増やすことができないかどうかを探って行く。

 いっけんすると効率がよいのは近道なようでいてかえって遠まわりになる。いっけんすると効率が悪いのは遠まわりなようでいて近道であることがある。英語のことわざではいそがば回れ(The longest way round is the shortest way home.)と言われる。

 菅首相がワクチンだけをたのみにしているのだとすれば、効率のよさをとってしまっていて、支点の数が一つだけになっている。ほかにもっと色々に支点の数を増やすことがなおざりになっている。危険性を分散させられていない。効率がよいやり方ではあるものの、都合よくことが運ばないことになると悪く出ることになる。科学のゆとりが欠けていることがわざわいすることになるだろう。

 参照文献 『逆説の法則』西成活裕(にしなりかつひろ) 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ)