五輪は子どもたちに夢や希望を与えられるのか―大人の社会のおかしさや汚れ

 五輪をひらいて、子どもたちに夢や希望をあたえる。選手が活躍することで子どもたちによいものをもたらす。与党である自由民主党菅義偉首相はそう言っていた。

 首相がいっているように、ただたんに五輪をひらくだけで子どもたちに夢や希望をもたらすことができるのだろうか。

 中国の文学者の魯迅(ろじん)はこうしたことを言っている。希望や絶望はどちらもともに虚妄であるのにすぎない。絶望の虚妄なるは、まさに希望の虚妄たるに等しいと言っている。

 子どもたちに夢や希望を与えるためにはどういったことがいるのだろうか。それをなすためには、ただたんに五輪をひらけばよいのだとは言えそうにない。五輪をひらいてそれを子どもに見せたりそこに子どもをまねいたりすればよいのだとは言えそうにない。

 日本の社会の中ではいじめや差別がまん延している。そのことについてをまずは直視するべきだろう。子どものことはとりあえず置いておけるとすると、大人の社会が汚れているのをとり上げられる。大人の社会がひどく汚れているのを放ったらかしておいて、子どもに夢や希望を与えられるとは言いがたい。

 食べるものにも困るといった空っぽの世界であれば、みんなが一つの目標を追い求めやすい。とりあえずみんなが食べて行けるようにしようといった目標を持ちやすい。みんなが食べて行けるようにする目標を追い求める中で、いじめや差別はややしずまる。

 日本は食べるものにも困るといった空っぽの世界から脱して、いっぱいの世界になっている。いっぱいの世界だと、みんなが一つの目標を追い求めることができづらい。いっぱいの世界ではいじめや差別がおきやすいのだ。

 子どもたちに夢や希望を与えるためには、日本の社会の中の弱者や少数者や辺境のところをとり立てるようにすることがのぞましい。弱者や少数者や辺境のところを客むかえ(hospitality)して行く。辺境のところとしては沖縄県がある。日本の政権は沖縄を冷遇して冷たくあつかっているが、これでは子どもたちに夢や希望を与えられない。

 日本の政治では味方と敵にすぐに分けて、敵を排除することがたやすく行なわれている。敵とされる者をよき歓待によって客むかえすることが行なわれていない。そのために子どもに夢や希望を与えられないでいる。

 大人が上から子どもにたいして夢や希望を与えて行くのではなくて、大人の社会がちゃんとしたあり方になっていることがいる。大人の社会がちゃんとしていることによって、子どもはそこからよい影響を受けることになる。

 日本の社会のありようが、子どもが夢や希望を持てるようになっているのかといえば、そうはなっていないところがいろいろにある。日本では精神論がとられがちであり、物質による制度の支えが足りていない。子どもにたいする物質の支えがしっかりとあるとはいえないのがある。

 子どもの貧困が日本ではおきているのがある。子どもの数が減っていて少子化になっていて、上の世代は超高齢になっているから、全体の人口のつり合いが大きく崩れている。超高齢化で上が重すぎるのがあるから、重みがかかりすぎていて子どもは夢や希望を感じづらいものだろう。

 教育に格差がおきているのがあり、不平等になっている。階層の格差がおきている。理想論としては子どもの可能性を十分に伸ばすような教育がなされることがいる。それぞれの子どもが持っている個性を最大に尊重することがいる。

 現実論としては、理想からはほど遠いものだろう。学校は国家のイデオロギー装置であり、国家のために役に立つ子どもを生産しようとしている。子どもを一つの型にはめて、そこからはみ出すことを認めない。まちがった愛国の教育が行なわれる。日本の国の負の歴史を十分に教えない。内向きの閉じたあり方がとられているので、国際的には通用しないことをやっている。

 子どもをとり巻く環境はけっしてよいとは言えないところがある。きびしく見ればそう言えるのがあり、大人の社会の病理がわざわいしているのがある。大人の社会の病理を少しでも改めて行くことがいる。大人の社会のおかしさに子どもを巻きこまないようにしなければならない。

 参照文献 「排除と差別 正義の倫理に向けて」(「部落解放」No.四三五 一九九八年三月)今村仁司 『「定常経済」は可能だ!(岩波ブックレット)』ハーマン・デイリー 枝廣(えだひろ)淳子(聞き手) 『教育格差の真実 どこへ行くニッポン社会』尾木直樹 森永卓郎 『子どもの貧困連鎖』保坂渉(わたる) 池谷孝司 『社会階層 豊かさの中の不平等』原純輔(じゅんすけ) 盛山(せいやま)和夫 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『非国民のつくり方 現代いじめ考』赤塚行雄 今村仁司