五輪と悪―国の外と内のあいだの悪ものどうしの相互作用

 五輪についてを善と悪の図式によって見てみたらどういったことが言えるだろうか。

 単純化したものではあるが、一つの視点としては、国際オリンピック委員会(IOC)は善とはいえず悪に当たる。悪のところがある。日本の政権は善かといえばそうとはいえず悪に当たる。

 どちらも健全なのではなくて、どちらかだけが健全なのでもなくて、どちらも退廃(decadence)しているのが IOC と日本の政権だ。とりわけ日本の政権は政治においての退廃がいちじるしい。理性が退廃していて理性が道具化している。

 IOC は西洋の五輪貴族と言われているのがあり、五輪をひらく日本の国にたいしてよい待遇を求めているという。よいもてなしを求めているという。五輪をひらく日本の国から益をせしめるといったことだろう。

 IOC は悪であり、日本の国にたいして無理を強いてくる。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が広がっているなかで、日本の国民の安全や安心を十分にくみ入れようとはせずに、外から五輪をごういんに強行しようとしてくるのが IOC だ。そのように見なすのであれば、IOC は悪で日本の政権は善(悪ではない)となるが、そう見なすのではない見なし方がなりたつ。

 IOC と日本の政権はどちらかだけが悪なのではなくてどちらも悪だ。そのなかでどちらがより悪なのかといえば日本の政権だ。日本の政権のほうがどちらかといえばより悪であり、腐敗の度合いがより大きい。腐敗がよりひどい。

 英語のことわざではこういったものがあるという。同じ羽の鳥は群れをつくる(Birds of a feather flock together.)。似ている者どうしがたがいに集まって協調し合う。たがいに近づき合う。ほかにはこういったものがある。あなたがわたしの背中をかいてくれれば、わたしもあなたの背中をかこう(You scratch my back and I'll scratch yours.)。これは互いに益のやり取りをする互酬性(reciprocity)のあり方をさす。

 どちらかだけが悪なのではなくて、どちらも悪と言えそうなのが IOC と日本の政権であり、IOC と日本の政権とのあいだには悪さの相互作用がはたらく。悪さの相互作用が互いのあいだに働くことによって、悪さの深さが増して行く。悪さの競争のようになる。

 悪さにおいてたがいに共鳴し合い、呼応し合っているのが IOC と日本の政権かもしれない。そのうちでどちらがより悪いのかといえばそれは日本の政権である。もしも(現実ではない仮定ではあるが)日本の政権が悪ではなくて善であれば、IOC はそれほどひどい悪をなすことはできづらいだろう。IOC が悪をなすのにしてもそこに歯止めがかかることがのぞめる。現実には日本の政権は善ではなくて(少なくとも一面においては)悪なので、IOC の悪をうながしてしまう。IOC の悪が増幅されてしまい、歯止めがかかりづらい。

 主(main)と従(sub)の二つに分けて見られるとすると、悪さの主に当たるのが日本の政権だ。きつい言い方になってしまうのはあるが、日本の国の中における巨悪といえるものなのが日本の政権である。巨悪と言うと言いすぎなところがあるが、日本の国において暴力を独占しているのが日本の政治の権力だ。すくなくとも相対的には巨悪だ。巨悪である日本の政権に乗っかる形の悪となっているのが IOC であり、主であるよりは従の悪にあたると言えるだろう。

 参照文献 『心理学って役に立つんですか?』伊藤進 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『悪の力』姜尚中(かんさんじゅん) 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編