ミャンマーの軍事政権に見られる啓蒙の弁証法と、世界の大国の責任

 ミャンマーの軍事政権は、排除の暴力を国民にふるいつづけている。なぜミャンマーの軍事政権はそれをしつづけることができるのだろうか。さまざまな理由があるのだろうが、大国である中国やロシアがうしろについているのが関わっていそうだ。

 中国の政治家の毛沢東は、目の前にある副次の矛盾のおくにある主要な矛盾を認知せよと言った。目の前にある副次のことのおくにある主要な核となるところを見て行く。それをくみ入れるようにしてミャンマーでおきていることを見てみたい。

 ミャンマーの国内でおきていることを副次の矛盾だと見なせるとすると、そのおくにある主要な矛盾としては、大国である中国やロシアがそのうしろについているのがある。国内でおきている副次の矛盾のおくにある主要な矛盾に目を向けてみると、国の外が関わってくる。中国やロシアは、ミャンマーの軍事政権が排除の暴力を国民にふるうことをよしとしているのがある。

 啓蒙が野蛮に転じる。哲学者のテオドール・アドルノとマックス・ホルクハイマーは啓蒙の弁証法を言った。ミャンマーの軍事政権は、自分たちは正義によっているとしているのかもしれないが、啓蒙が転じて野蛮になっている。それで国民にたいして排除の暴力をふるうことになっている。

 国民にたいして排除の暴力をふるうといった野蛮なことがおきてしまっているのは、世界の大国の責任が少なからず関わっている。ミャンマーの国内だけを見れば副次の矛盾を見ることにとどまるが、そのおくにある主要な矛盾に目を向けることができるとすると、国の外に目を向けられる。世界の大国の中で、中国とロシアがミャンマーの軍事政権の肩を持ってしまっているのが悪くはたらいている。

 中国やロシアだけではなくて、アメリカもまた大国としての責任があるのはいなめない。アメリカではいま社会の中で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が広まっていて、そのなかで東洋系の人たちへの差別がおきているという。アメリカの国内においても、基本の人権(fundamental human rights)が侵害されるようなことがいろいろにおきているのである。

 大国の責任としては、中国やロシアだけではなくて、アメリカにもそれがあるのがあり、大国どうしで対話を行なうことが欠けてしまっている。中国やロシアだけではなくてアメリカにもまた悪いところが少なからずあるのだから、善と悪といった二分法に分けられるものではない。

 副次の矛盾だけではなくてそのおくにある主要な矛盾にまで目を向けられるとすると、ミャンマーでおきていることは、ミャンマーの軍事政権だけにとどまらず、世界の大国に責任があり、また世界のさまざまな国に責任がある。世界の国どうしでたがいに民主主義による対話をなすことが欠けてしまっているのが悪くはたらいている。

 他国の汚点は自国の汚点といったところがある。他国も自国も国である点では共通点をもつ。どの国もそのなりたち(建国)は暴力によっていることが多いとされる。そのことをくみ入れるようにしてみたい。ミャンマーの軍事政権が行なっている悪いことは、国の政治がなす悪いことだが、ほかの国でも多かれ少なかれ悪いことはおきているのだと見なせる。アメリカにおいても国内で人権の侵害がおきているのがあるから、必ずしも他人ごとだとは言えないものだろう。それぞれの国がそれぞれに悪いところを抱えているのがあり、国の中に呪われた部分をもつ。

 国の中にある負のところである呪われた部分を見るようにして、そこを無視しないようにする。それぞれの国がもつ呪われた部分を見るようにしつつ、世界の国どうしで民主主義の対話をなすようにすることがのぞましい。世界の国どうしで対話をなすようにすることが、間接としてミャンマーの軍事政権がやっているような悪いことを未然に防いだり、悪いことのていどを軽いものにおさえたりすることにつながるのではないだろうか。

 参照文献 『古典の扉 第二集』杉本秀太郎(すぎもとひでたろう)他 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『啓蒙の弁証法テオドール・アドルノ マックス・ホルクハイマー 徳永恂(まこと)訳 『橋下徹の問題解決の授業 大炎上知事編』橋下徹リヴァイアサン 近代国家の思想と歴史』長尾龍一 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ)