検察のあり方の順機能と逆機能―プラスとマイナス

 検察は不偏不党だ。それが揺らいでしまいかねない。国民からの不信感をまねいている。検察の関係者はそう言っているという。

 ここで言われているように、もしも検察が不偏不党であるのなら、いまの首相による政権はばしばしと取り締まられているはずではないだろうか。首相をはじめとしてきびしく追及されて取り締まられているだろうから、とっくに権力の座から追われているだろう。

 色々な見かたがあるだろうから、一方的にこうだと決めつけてしまってはいけないが、いまの与党である自由民主党は、組織として不祥事を色々にかかえる不祥事集団となっている。政権は不祥事を色々にかかえていて、それを隠ぺいしようとしている(してきた)が、白ということはほぼありえず、よくても灰色で、悪ければ黒だ。

 いまの首相による政権がぴんぴんとして安泰に活動できているのは、検察が不偏不党ではないことをあかし立てている。そう言っては言いすぎになってしまうだろうか。

 検察のあり方にはプラスとマイナスがあって、そこの二律背反性から難問がおきている。とにかく政治の権力のことをびしばしと取り締まればよいとは言い切れないが、かといって権力のことを甘やかしてしまうと権力が腐敗して行く。

 いまの日本の検察のあり方は、権力のことをきびしく取り締まって行くのではなくて、その逆に甘やかすことで、権力の腐敗に手を貸している。権力を甘やかすのが日本の社会にとって一時的にプラスになるところがあるとしても、それによっておきてくるマイナスがあるのを見逃すことができない。

 検察は国家装置だから、けっきょくは政治の権力とぐるなところがなくはない。政治の権力に加担することがおきてくる。理想としては不偏不党で独立したあり方であるとしても、じっさいには退廃や堕落する。政治の権力におもねることがおきてくる。

 日本の社会では空気を読まされることがおきやすいから、空気による圧力がはたらく。空気にあらがうと波風が立つから、空気を読んでそれに従っていればことを荒立てないですむ。空気を読んで同調や服従する動機づけがはたらく。わざわざ空気を読まないで波風を立てる動機づけがはたらきづらい。

 何が正しいことなのかは難しいところがあるから、一か〇かや白か黒かといったように、完ぺきに正しいことと完ぺきにまちがったことがあるのではないだろう。正しさのものさしがはっきりとはしづらいから、まったくの善かまったくの悪かといったわかりやすい見なし方は成り立ちづらい。

 政治の権力は、まったくの善でもないしまったくの悪でもないのがあるから、検察が動くさいに、そこが難しい点になってくるかもしれない。まったくの悪なことは少なく、少なくとも民主による選挙によって選ばれているのがある。国民の多数が選んでいる。そこの形式の正当性は認めなければならないが、かといって、その点だけをもってしてよしとしすぎると政治の権力の悪を見逃すことになりかねない。

 何が正しいことなのかでは、そのものさしを単純に振りかざすことはできづらい。そうした複雑な社会のあり方になっている。それがある中で、効率性と適正性では、効率性をとりすぎてしまっている。それによって適正性や公正性がないがしろになっている。

 効率性というプラスを得るかわりに、適正性や公正性や公平性がないがしろになるというマイナスをこうむる。お上には甘く、下にはきびしいあり方になる。これは権威主義のあり方だ。お上による巨悪(ちんけな悪をふくむ)は法の網の目を強引にかいくぐってまんまと逃げ切る。お上の悪とはちがって下の悪にはきびしいから、小さいことでも網の目にひっかける。

 検察がもしも不偏不党であるのなら、かなり高い自律性をもつことになるが、じっさいには他律によって動かされているところがいなめない。政治の権力の空気を読まされている。ほんとうに政治の権力から独立しているとは言えないのが他律であるゆえんである。国家装置に当たるからやむをえないところはあるだろうが、他律になりすぎていることで、効率性によることになり、適正性や公正性がないがしろになる。権力チェックの追及が甘くなることで、そのマイナスが大きくなると、あとで小さくない害が社会におよぶ。

 けっきょくのところ悪とは何かということになると、それは効率性によりすぎることによって、適正性や公正性がないがしろになり、意味を欠いた空虚さにおちいることがあげられる。いまの首相による政権は、不祥事を色々にかかえていて、権力を保つことが自己目的化していて、意味を欠いた空虚さにおちいっているように見うけられる。検察はそれに加担してしまっているとすると、そこにもまた意味を欠いた空虚さがあることになる。

 参照文献 『ポリティカル・サイエンス事始め』伊藤光利編 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『正しさとは何か』高田明典(あきのり) 『追及力 権力の暴走を食い止める』森ゆうこ 望月衣塑子(いそこ) 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『法律より怖い「会社の掟」』稲垣重雄 『これが「教養」だ』清水真木(まき) 『悪の力』姜尚中(かんさんじゅん)