どのような戦争の見なし方を首相はもっているのか。
中国と台湾がぶつかり合う。そうなったさいに場合によっては日本が軍事の力を使うことがある。そうしたことを言ったのが、与党である自由民主党の高市早苗首相だ。
これまでの政府よりも、より踏みこんだことを言ったのが高市首相である。中国と台湾のことについて首相が言ったことの、そのよってきたる戦争への見なし方を探ってみる。
三つの見なし方がある。戦争の見なし方としては、正戦論、無差別戦争観、違法戦争観がある。
三つのうちで、高市首相は違法戦争観にはあまりよっていない。どれによっているのかといえば、正戦論と、無差別戦争観だ。
もしも高市首相が違法戦争観によっているのだとすれば、日本が中国にたいして軍事の力を使うことがあると言うことにはなりづらい。
日本が中国にたいして軍事の力を使うのは、違法戦争観には合わない。適さない。日本の軍事の行動が、違法になってしまうからである。国際の点からすると違法である。
戦争は違法である。そうした決まり(rule)によるようにして行く。そもそも、戦争はやってはいけないことだとするのなら、日本が中国にたいして軍事の行動をするのは悪いことだ。やってはいけないことを日本がやることになる。
正当性を問いかけて行く。高市首相が言ったことの正当性を問いかけてみると、正当性が欠けている。日本が中国にたいして軍事の行動をおこすのは、国際の法の決まりからして正当性が欠けているので、日本は自国を合理化できない。原則論として日本は中国に軍事の行動をおこさないようにすることが、日本の正当なありようだ。
中国が日本にたいして、攻撃をするのとはちがう。中国は台湾を支配しようとしているのであって、日本にたいして攻撃をするのではないだろう。日本が何もしなければ、中国と台湾がぶつかり合ったとしても、日本が他の国と戦争をすることはまぬがれる。
もつべき戦争観としては、首相は違法戦争観をもつべきだ。三つのうちでもつべき戦争観はあるけど、じっさいに高市首相が持っているのはそれとはちがって残りの二つだろう。正戦論と無差別戦争観をもつ。
倫理観や価値観として、首相がもたないほうが良いものなのが、正戦論と無差別戦争観だ。もたないほうがよい二つの戦争観をもっていることがおしはかれるのが高市首相である。
中国にたいして場合によっては日本が軍事の力を使うことがある。そうしたことを言ったのがあるけど、それは正戦論や無差別戦争観から導かれることになったものだろう。二つの戦争観から導かれての発言だ。
日本は正しいのだとするのが正戦論だ。戦争と正義がじかに結びつく。正義の戦争であれば、よい。どのような戦争であったとしても悪いのだとはしない。
現実論によるものなのが無差別戦争観だ。正義とは切り離して戦争を見る。国のもつ力のちがいを見て行く。
現実論として見てみると、じっさいに戦争がおきてしまっている。世界で戦争がおきているのは否定できないのはある。ロシアとウクライナとのあいだの戦争がある。
起きないだろうとされていても、起きてしまう。生起する確率が低くて、ほぼ〇割だろうとされていても、完ぺきに〇割だとは断定することができづらいのが戦争だろう。起きないだろうとされていても、起きてしまった事例があるから、生起の確率からすると戦争がおきることは〇割だとはできそうにない。
日本のまわりで、いっさい戦争がおきないのだとは断定できないのがある。ずっと日本の平和がこれから先に保たれつづけるといった絶対の保証があるのとはちがう。日本が加わるかたちで戦争がおきたり、(日本がじかに加わるのではないのにせよ)日本のすぐ近くで戦争がおきたりすることはありえる話である。
おだやかで安らかな所に日本があるのだとはできづらい。日本が置かれているのは地域としては東アジア(東北アジア)だ。力をもった国々がひしめいている。国どうしでお互いに結びつき、まとまり合う多国間の仕組みがまだ作られていないでいる。
それなりの大きさの軍隊をもつ国がいくつかあるのが東アジアだ。中国、北朝鮮、アメリカ、ロシアである。経済の力が高いのもあり、東アジアの国々をすべて足し合わせると、アメリカを超える。アメリカの国民総生産(GNP)を超えるほどの大きさをもつ。
いまの(これまでの)日本はいちおう平和だけど、平和はじかには定義づけできづらい。消極の定義づけができるのにとどまる。とりあえず戦争がおきていないのであれば平和だとできる。戦争がおきていないのであれば、さしあたって平和だとはできることになる。本当の意味で平和なのかどうかは不明である。
戦争をしたいのではなくて、国を守って行くようにする。日本を守るのだとしながらも、高市首相は、正戦論によっている。日本が正しいのであれば、戦争をしてもよい。正義のためであれば、戦争をするのはありだとする。
無差別戦争観によっているところがあるのが高市首相だけど、現実論としては否定できないものではある。台湾は正式には国ではないけど、日本のすぐ近くで、国どうしが戦争をやり合う。中国と台湾がぶつかり合うことがいっさい起きないとはできないから、無差別戦争観が当てはまるところがないではない。
少しも正しくないのではなくて、甘く見ればほんの少しは当たっているところがあるのが高市首相が言ったことだろう。わずかに当たっているところはあるものの、首相が持つべきふさわしい戦争の見なし方であるとはできないのがある。
今とかつての、今かつて間の交通(communication)を見て行く。かつては正戦論や無差別戦争観が重みをもっていた。戦争は違法だとはされていなかった。かつてのあり方によるところがあるのが高市首相のあり方であり、歴史の進みをあと戻りさせているところがある。
かつてから歴史が進んだことによって、戦争が違法であるとされるようになった。かつてからだんだん歴史が進んだことによって文化の力(soft power)が高まったのがあり、それで今にいたっている。
今における文化の力の高まりぐあいを見て行く。たしかに、ロシアとウクライナのあいだで戦争がおきてしまったように、歴史の進みをあと戻りさせようとする動きがあるけど、そうかといってかつてに回帰できるのとはちがうだろう。
そっくりそのままかつてのありように回帰できるのだとすると、不回帰点(point of no return)がまったく作られていないことを示す。今とかつての間に、まったく断絶がないことを表す。切断がないことになる。
再びかつてのような、まだ文化の力がそこまで高まっていなかったころに回帰できるのではなくて、あるていど文化の力が高まっているのが今なのだから、それを十分に組み入れて行く。歴史においての達成をくみ入れて行く。
かつてにおける負のことがらの悲しみ(pathos)をもつ。日本がかつてにおかした歴史の大きな失敗からくる悲しみを抱きしめて行く。日本の失敗や敗北や敗戦を抱きしめる。
文化の力の高まりを十分に生かすためには、高市首相のように、政治家がまちがったことを言ったら、それにたいして批判の反応をばしばしやって行くことがいる。本質をぎんみして行く。
政治家のまちがった言動にたいして、批判の反応をやって行く。批判の反応をやって行かないと、文化として劣っていることになる。いまの日本は、文化の高まりを十分に生かせていない。政治家による、歴史の進みをあと戻りさせる動きに、同調してしまう。よくない政治家のありようには、不同意して行く。不同意の反応を示すようにして行く。
わるい政治家には不同意をするようにする。高市首相がまっとうな戦争観をもつことをうながしたい。首相は違法戦争観によるようにして、中国にたいして日本が軍事の行動をおこさないように、抑制をきかせる。日本の国において、抑制と均衡(checks and balances)をきかせるようにして、権力を監視(check)して行くことが日本の平和にとっていることである。
参照文献 『カルチュラル・スタディーズ 思考のフロンティア』吉見俊哉(よしみしゅんや) 『逆説思考 自分の「頭」をどう疑うか』森下伸也(しんや) 『橋下徹の問題解決の授業 大炎上知事編』橋下徹 『戦争の克服』阿部浩己(こうき) 鵜飼哲(うかいさとし) 森巣博(もりすひろし) 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫 『日本の刑罰は重いか軽いか』王雲海(おううんかい) 『知の技法』小林康夫 船曳建夫(ふなびきたけお) 『あいだ哲学者は語る どんな問いにも交通論』篠原資明(しのはらもとあき) 『超訳 日本国憲法』池上彰(いけがみあきら) 『政治家を疑え』高瀬淳一 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『歴史 / 修正主義 思考のフロンティア』高橋哲哉 『大学受験に強くなる教養講座』横山雅彦 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信 『すっきりわかる! 超訳「哲学用語」事典』小川仁志(ひとし) 『「戦争と知識人」を読む 戦後日本思想の原点』加藤周一 凡人会 『ナショナリズム 思考のフロンティア』姜尚中(かんさんじゅん) 『人はなぜ戦うのか 考古学からみた戦争』松木(まつぎ)武彦 『「説明責任」とは何か メディア戦略の視点から考える』井之上喬(たかし) 『JAPAN UNMASKED : The Character & Culture of the Japanese』Boyé Lafayette De Mente 『スター・ワーズ 星新一の名言一六〇選』江坂遊(えさかゆう) 『失敗の研究 巨大組織が崩れるとき』金田信一郎 『徹底図解 社会心理学 歴史に残る心理学実験から現代の学際的研究まで』山岸俊男監修 『絶対に知っておくべき日本と日本人の一〇大問題』星浩(ほしひろし) 『信頼学の教室』中谷内一也(なかやちかずや)