日本で五輪を開くべきかどうかと、日本の国にはたらく外からの外圧

 国際オリンピック委員会(IOC)は、すでに五輪を開くことを決めている。与党の自由民主党菅義偉首相は会見の中でそう言っていた。首相が会見の中で言っていることはどのようなことを意味するのだろうか。

 五輪のことについてを IOC に丸投げしている。そのように首相の発言からは見える。これは日本がすでに決まったことである既成事実に弱いことを示している。それにくわえて日本の政治の無責任の体制があらわれている。さらに、日本をとり巻く他国や世界からの外圧によって日本の政治が決められていることをしめす。

 日本の政権と IOC との関係や、日本の政権とアメリカの国との関係がある。これらの関係は日本にはたらく外からの外圧だと言える。日本の政権は外からの外圧によって動かされるところがあり、他者によって駆動されている。外からはたらく外圧にはさからえない。自律(autonomy)ではなくて他律(heteronomy)になっていると言えるだろう。

 日本の首相がアメリカに行ったさいに、日本とアメリカはお互いに一致したといったことがいくつも言われていた。この一致についてをとり上げてみると、日本とアメリカとでいろいろと一致しているとされるように、日本と IOC とでいろいろと一致しているといえるのだろうか。一致であるよりもその反対に不一致の点がいろいろにあるものだろう。

 日本の政権は、他国であるアメリカに動かされたり、IOC に動かされたりといったようになってしまっている。日本の外からくる外圧によって日本の国が動かされているのを、一致しているのだと言う。日本の外からくる外圧が主(main)で、日本の政権は従(sub)になっていて、そのことを一致としている。そう見られるのがありそうだ。

 いろいろなものに依存してしまっているのが日本の政治のありようであり、依存するものの一つに当たるのが日本の外からくる外圧だ。困ったことになったら日本の外にある外圧であるアメリカに頼ろうとしてしまう。日本の国が自分たちで何とかしようとしない。自分たちで駆動しようとしない。IOC が決めたことだからといったことで、IOC のせいにする。日本の国ではなくて他のもののせいにする。そこから日本の国の無責任の体制がおきることになる。

 日本がアメリカと一致していることが多いのは、たんに日本がアメリカに依存しているからにすぎず、日本が外からの外圧に弱いことをしめす。そのあり方を改めるためには、日本とアメリカとでどこが一致していないのかの不一致をいろいろに明らかにして行きたい。

 日本の国内でいえば、政権と反対勢力(opposition)とのあいだで、一致していない不一致ばかりではなくて、どこがお互いに一致しているのかを明らかにして行く。それが行なわれていない。お互いに折り合うことが行なえていないのである。政治では、お互いに対立し合うだけではなくて、お互いに協調し合うことが欠かせないのがあり、政権と反対勢力とのあいだでの協調が欠けている。信頼し合えていない。協調が欠けていて対立だけになってしまっているのはおもに政権をになう与党である自民党に責任がある。

 日本の国外や国内において、どういったものがお互いに一致し合っていて、どういったものが不一致になっているのかをはっきりとさせて行く。それが行なわれればのぞましい。一致していることばかりをいろいろに言うことが害になることがあるし、不一致のところばかりをいろいろに言うことが害になることもある。

 政治では対立だけではなくて協調することがいるから、対立ばかりではまずいし、協調ばかりでもまずい。不一致のところばかりを言うのは対立をあおることになりすぎる。一致しているところばかりを言うのは協調をあおることになりすぎて、ほんとうは対立つまり政治があることを隠ぺいすることになるからまずい。どこがお互いに対立し合っているのかを明らかにして行き、政治化をうながすべきだろう。

 参照文献 『政治の見方』岩崎正洋 西岡晋(すすむ) 山本達也 『絶対幸福主義』浅田次郎 『現代政治理論』川崎修、杉田敦編 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『静かに「政治」の話を続けよう』岡田憲治(けんじ) 『どうする! 依存大国ニッポン 三五歳くらいまでの政治リテラシー養成講座』森川友義(とものり) 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『「野党」論 何のためにあるのか』吉田徹 『信頼学の教室』中谷内一也(なかやちかずや)