新型コロナウイルスと交通―人間とウイルスとのあいだでおきている交通

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が社会の中で広がっている。その中で、ウイルスを交通の点から見てみられるとするとどのように見なすことができるだろうか。

 新型コロナウイルスは変異種が出ていて、新しいものに変異しているのがある。これは交通の点からすると異交通に当たるものだと言えるだろう。ウイルスが進化して行くのは、より抵抗性をもつ強いあり方にウイルスが変わることだ。もとのものよりもより強いやっかいなあり方にウイルスがなるような交通がウイルスそのものにおきていることをしめす。

 国を越えて新型コロナウイルスが広まるのは双方向性の双交通がおきていることをあらわす。グローバル化の中で国を越えた人の移動が多くなっているから、ウイルスが国を越えて広まりやすい。双交通がおきやすいことをしめす。

 国を越えた人どうしの行き来を自由に行なえるようにするのは双交通だ。それだと新型コロナウイルスの感染をおさえづらい。国を越えた人どうしの行き来を制限するのは交通がさえぎられる反交通だ。限定した人の行き来だけを許す。

 人間が新型コロナウイルスにうち勝とうとするのは、人間からウイルスへの一方向性の単交通を目ざすことだ。人間がウイルスをうわ回ろうとする。その逆にウイルスが人間をうわ回ることもないではない。ウイルスが優になり人間が劣になる単交通だ。

 人間が新型コロナウイルスにうち勝とうとしてワクチンをつくる。そのワクチンが世界中で使われるようになれば、人間がウイルスにうち勝とうとする手だてが双交通になるのをしめす。ウイルスへの対抗の手だてが世界中で双交通になって広まる。

 新型コロナウイルスに感染してしまうのは、単交通がおきているのをあらわす。だれしもがウイルスにかかりたいわけではないから、人間のほうからすると逆方向の単交通になっていて、受動の一方向の交通になっている。ウイルスから人間への逆向きの交通だ。

 人間の体には自然治癒力がそなわっている。新型コロナウイルスにかかったさいには、ウイルスを体の外に出そうとしたり、体の中でウイルスをやっつけようとしたりする反応がおきる。ウイルスはただやられっぱなしではなくて、なんとかして生きのびようとするから、人間の体の自己保存とウイルスの自己保存とのあいだでせめぎ合いがおきる。人間の体の中で、人間の体の自然治癒力にあらがい、なんとか人間の体の外に出てウイルスが生きのびつづける。そうなれば人間の体とのあいだでウイルスは反交通になったことをあらわす。

 参照文献 『あいだ哲学者は語る どんな問いにも交通論』篠原資明(しのはらもとあき) 『現代思想を読む事典』今村仁司