go to キャンペーンの政策をこのままやりつづけるべきなのか、それともやめるべきなのか―目的と手段の組みによって見てみたい

 go to キャンペーンの中止に反対する。ツイッターハッシュタグではそうしたことが言われているという。このまま政権による go to キャンペーンをつづけていってもらいたいのだとしている。それはふさわしいことなのだろうか。

 政治においてどのような意見を言ったとしてもそれが許容される範囲の中のことなのであればそれぞれの人の自由にまかされている。できるだけ思想の自由市場(free market of ideas)にまかされることが大切だが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が増えている中で人々に旅行や飲食店に行くことをうながす go to キャンペーンをこのままおし進めつづけるのであってよいのかどうかは定かとは言えそうにない。

 政権が政策をなすさいには、どういった目的のためにどういった手段をとるのかがはっきりとしていることが大切なのではないだろうか。目的と手段はそれぞれを絶対化することはできづらい。政策論は相対化されることが必要だ。それが絶対化されると危険である。

 理想論としては目的にたいしてもっとも適した手段をとることができたらよいが、現実論としてはそこに制約がかかってくる。たとえば、お腹が減っているのならどこか食べものが置いてあるお店などに行ってそこにある食べものを勝手に食べること(無銭飲食を含む)は一つの手段だが、この手段は法の決まりに反するものなのでとることができない。それをしたら法の決まりに反することになる。

 理想論としては目的にたいして法の決まりを無視した手段がいろいろにありえるが、それは制約の外にあるものであり、現実論としては制約の外にある手段をとることはできず制約の内であることがいり手段の数は限られてくる。もっとも効率のよい手段をとることは理想論としてはできるが現実論としてはできづらい。効率は低くはなるが適正な手段をとることが安全であり長期では利益になる。

 政治などで悪をなすのは目的にたいして適正さよりもてっとり早く効率のよい手段を不正にとることだ。ほんらいは制約の外にあるためにとることができないことになっている手段をとる。政治の権力が目先の短期の利益に走る。政治において悪や善とは何かは難しい問題なのでいちがいにはこうだとは言えないのはあるかもしれないが、長期の利益ではなく目先の短期の利益に走るときに悪がおきやすいだろう。

 与党である自由民主党菅義偉首相による政権は、go to キャンペーンをこれからもおし進めつづけようとしているが、これは政策において目的と手段が転倒してしまっているのだと見なせる。手段の目的化になっている。go to キャンペーンをおし進めつづけることが自己目的化してしまっていて、ほんらいの目的との関連性を失う。

 いろいろな不祥事を抱えこんでいるのが自民党であり、自民党は不祥事組織となってしまっている。きびしく見ればそういったふうに見なせるのがあり、不祥事組織でしばしば行なわれることになるのが目的と手段の転倒だ。それによって手段が自己目的化することになる。go to キャンペーンの政策とは関わりがないが、自民党がかかげているものである、何が何でも憲法の改正を目ざすこともそのうちの一つであり、目的と手段が転倒していて手段が自己目的化してしまっている。

 不祥事組織に見られる目的と手段の転倒による手段の自己目的化を避けるためには、目的と手段の組みをゆるめることがあったらよい。その組みをきつくしてしまうと、がっちりと固く組み合わさってしまい、ほかの目的やほかの手段がさまざまにあることが見失われる。視野がせばまって狭窄する。たった一つの目的やたった一つの手段しか見えなくなってしまう。

 おおきなプラスが見こめるものなのであれば、そこには大きなマイナスがくっついていることが少なくない。プラスとなる順機能(function)があり、マイナスとなる逆機能(dysfunction)がある。政権が政策をなすさいには、プラスとなる順機能だけを見てマイナスとなる逆機能を見落とすのはまずい。もしもマイナスとなる逆機能のほうが大きく上回っているのであれば、総合で見るとマイナスになっているおそれがある。つり合いがとれていないのだ。国民にかたよりなくむらなくプラスとなるようにもつり合いがとれているのでないとならない。プラスの順機能のところは目だちやすいが目だちづらいマイナスの逆機能のところが盲点となっているとそこが落とし穴になることがある。

 参照文献 『正しく考えるために』岩崎武雄 『法律より怖い「会社の掟」 不祥事が続く五つの理由』稲垣重雄 『疑う力 ビジネスに生かす「IMV 分析」』西成活裕(にしなりかつひろ) 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『現代哲学事典』山崎正一 市川浩編 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』飯田泰之(いいだやすゆき)