アメリカのドナルド・トランプ大統領が言うように、米大統領選挙で不正はあったのかどうか―主張直撃型議論と無根拠型議論

 アメリカの大統領選挙で、不正が行なわれた。アメリカのドナルド・トランプ大統領はそう言っている。

 トランプ大統領が言っていることについてをどのように見なすことができるだろうか。そこでトランプ大統領がやっていることは主張直撃型議論や無根拠型議論だろう。トランプ大統領は選挙の不正の客観の証拠(evidence)となるものを示していないからである。

 主張直撃型議論や無根拠型議論をやっているのがトランプ大統領だとすると、トランプ大統領の言っていることをそのままうんそうだなとうのみにすることはできづらい。うなずくのではなくてトランプ大統領の言っていることははたしてほんとうなのだろうかと首をかしげてみることがいるだろう。

 アメリカから目を転じて日本の国の政治ではトランプ大統領がやっているようなことがよく行なわれやすい。だから対岸の火事とは言えないものだろう。日本の国の政治では政治の意思決定の過程が示されないことが多く、その過程の透明性がほとんどない。とにかく決まったことなのだからといったことで既成事実化される。既成事実に弱いことが悪用される。

 修辞学の議論の型(topica、topos)の類似からの議論で見てみられるとすると、トランプ大統領が行なっていることと日本の国の政治で行なわれていることとのあいだには類似性がある。そのことを大げさに言ってしまえるとすると、完全に一致しているとか完全に一体だといってもよいかもしれない。

 トランプ大統領のやっていることと日本の国の政治で行なわれていることとのあいだに類似性があるとすると、トランプ大統領のやっていることが悪いことやよくないことであるとするのであれば、日本の国の政治でも悪いことやよくないことが行なわれていることになる。悪さやよくなさにおいておたがいに共通点がある。

 言っていることややっていることの中身がどうかとは別に、言うことの形において主張直撃型議論や無根拠型議論にはならないようにしたい。ただ主張を言い放つだけで終わりにするのではないようにしたい。それだと単段になってしまうが、それを多段になるようにして行く。段を細かくして行くようにして、細かいつながりを見て行く。そこが大ざっぱになってしまい、たった一つの段だけになっていて、その単段によっていることをうのみにしてしまうとまちがうおそれがおきてくる。

 政治の権力者が一つの段だけの単段で主張を言い放っているのだとしても、それをそのままうのみにするのではなくて、多段によってとらえ返すことがあったほうが益になることがある。段をせめて二つより以上くらいにするようにして、段を細かくするようにして、一つひとつの段の確からしさや段どうしのつながりがどうなっているのかを見て行く。

 段の一つひとつの確からしさと段どうしのつながりについてを批判として見て行くようにして行きたい。報道機関がそれを怠ると日本の戦前や戦時中の大本営発表のようになってしまうが、日本の大手の報道機関ではそれがよく行なわれていて手ぬきが目だつ。情報を報じることの効率性は高いが適正さがないがしろになっていたりゆがみがあったりする。商売で利益をあげることの制約条件の中においてできるだけ適正さを高めるために政権への批判性をもつように改めて行くことがいる。

 参照文献 『論理表現のレッスン』福澤一吉(かずよし) 『増補版 大人のための国語ゼミ』野矢(のや)茂樹 『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』西成活裕(にしなりかつひろ) 『議論入門 負けないための五つの技術』香西秀信 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』飯田泰之(いいだやすゆき)