大阪府の大阪都構想の住民投票は、そもそも行なわれるべきだったのだろうか―絶対的で客観的な必要性があったかどうかは定かではない

 大阪府では大阪都構想住民投票が行なわれている。大阪都構想がよしとされるのかそれともよくないとされるのかは結果が出てみないとわからない。それとは別に、そもそも大阪都構想住民投票そのものを行なうべきだったのだろうか。

 大阪都構想住民投票が行なわれて、そこでそれがよしとされるかよくないとされるかが争われるが、それとはちがった視点として、大阪都構想住民投票を行なうことそのものがよいことだったのかよくないことだったのかを見てみたい。

 大阪都構想そのものについてを見てみられるとすると、その住民投票が行なわれることがまちがいなくよいことだったのだと完全にしたて上げたり基礎づけたりすることはできづらい。住民投票を行なわないほうがよかったのだと見られるのもまたあるだろう。それを行なわないほうがよかったかもしれないのは、すでにもう一回ほど過去に住民投票が行なわれて結果が出ているし、かついまは新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大しているさなかだ。

 必要性の点から見てみられるとすると、大阪都構想住民投票そのものは、すでに過去に一回ほど行なわれて結果が出ていることだし、またウイルスの感染が広がっているさなかの状況なのもある。なにをなすべきかの優先順位としては、ウイルスの感染に対応するよりもより優先度の高いものとして大阪都構想住民投票があるのだとは見なしづらい。住民投票をすることの必要性は客観としてそこまで高いとは言えないだろう。

 どのようにすることが最適化につながるのかと言えば、大阪都構想住民投票そのものを行なうのではなくて、それを行なわなかったほうがより最適化されたおそれがある。どうしてもいまの時点でなにがなんでも住民投票を行なわなければならないとは言い切れないから、住民投票を行なうことは理想といえる大局の最適になっているとは言い切れそうにない。よくても局所の最適化にとどまっているものだろう。

 住民投票をすることとしないこととを対比して見られるとすると、それをすることがまちがいなく最適化につながるのだとは言い切れず、しないほうがより最適化される見こみがあった。しないほうがより最適化されることになったのだとすると、理想といえる大局の最適に確かに近づいていっているのではなく逆により遠ざかってしまっている。住民投票をすることで理想の大局の最適にまちがいなく確かに近づいて行けているのだとは言えそうにない。

 理想の大局の最適から遠ざかっている中で、大阪都構想をよしとするかよしとしないのかが争われているのがあるとすると、大阪都構想住民投票を行なうことにまちがいなく意味や価値があったのだとは見なしづらいところがある。

 科学のゆとりをもつことができるのだとすると、とにかく住民投票を行ないさえすればそれがよいことなのだとはしないようにして、それを行なわないこともまたあってもよかったかもしれない。それがあってもよかったかもしれないのは、とにかく住民投票をやってしまえといった勢いでやるやり方よりも、ウイルスの感染が広まっている状況を十分にくみ入れるようにするべきだし、すでにもう住民投票は過去に一回ほど行なわれて結果が出ているものだからだ。

 ウイルスの感染が広がっている状況や、過去にすでに一回ほどやって結果が出ていることをふまえれば、住民投票をいまの時点でやることにまちがいのない意味や価値があるとは必ずしも言えそうにはなく、科学のゆとりをもつようにしてもよかった。そのゆとりをもつようにして、とにかくやってしまえといった勢いでやるのではなくて、さまざまにある論点を分析(分割)するやり方でやるようにして行く。

 分析のやり方によっていろいろな個別の具体の論点に細かく分けるようにして、そのそれぞれをとり上げるようにして行く。一つひとつの個別の論点を明らかにして相対化して行く。そういった分析のやり方をとるようにして、それで一つひとつについてを細かい歩みによって少しずつ最適化することを試みて行くやり方もまたあるだろう。

 分析によるやり方はたしかな一つの方法によるものではなくあくまでもがい然性の試みによるものだ。絶対性や確実性ではなくて相対性や不確実性による。絶対性や確実性は近代の純粋な方法主義による。相対性による分析のやり方は二分法で一か〇かや白か黒かをきっちりと完全に明らかにして行くものではなくて、その中間のていどを見定めて行くやり方だ。じっさいに行なわれている大阪都構想住民投票では、二分法による白か黒かのたしかな一つの方法としてどれがふさわしいのかや正しいのかを争い合うものとなっているようにも見うけられる。

 参照文献 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『逆説の法則』西成活裕(にしなりかつひろ) 『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』飯田泰之(いいだやすゆき) 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『トランスモダンの作法』今村仁司