アメリカの大統領選でトランプ大統領が再選されるかどうかと、選挙の不正

 もしも自分が再選されないのだとしたら、それは選挙で不正が行なわれたときだ。アメリカのドナルド・トランプ大統領は大統領選においてそうしたことを言っていた。

 トランプ大統領が言っているように、トランプ大統領が大統領選で再選されれば選挙で不正が行なわれなかったことになるが、落選すれば選挙で何らかの不正が行なわれたことを意味するのだろうか。

 大統領選でトランプ大統領が再選されなければ選挙で不正が行なわれたのにちがいない。このことを逆(対偶)から見てみられるとすると、不正が行なわれなければトランプ大統領が再選されることになる。

 選挙で不正が行なわれたかどうかは、たしかな客観の証拠事実(エビデンス)があるかどうかを見てみなければならない。たしかな証拠事実がないのにもかかわらず、不正が行なわれたというのだと、深刻な陰謀理論を持ち出すことになる。

 陰謀理論には明るいものと深刻なものとがあるが、もともとアメリカにはこのうちの明るさをとるようなユーモアのゆとりをもつ。文学者の丸谷才一氏によるとそうなのがあるが、そのゆとりがだんだん失われているのがあり、大統領が深刻な陰謀理論を持ち出すまでにいたっている。深刻な陰謀理論を持ち出すのには危険性がつきまとう。

 場合分けをして見られるとすると、選挙で不正が行なわれなかったとしてもトランプ大統領が選挙で落選することは十分にありえることだろう。しっかりと適正に質を重んじてさまざまな重要な争点をもれなくとり上げながら選挙が行なわれれば、トランプ大統領は落選しやすくなる。質の点ではトランプ大統領はかなりのまずさをもつ。いろいろなフェイクニュースをたれ流している。たとえ自分(自国)に誤りやまちがいがあったとしてもそれをすなおに認めるような知の廉直(誠実)さがない。

 理性が退廃していて、(質を抜きにして)数字の量によっていることによって、トランプ大統領が再選されることになる。そういうことが言えるのではないだろうか。いちじるしく理性が退廃して道具化している。それを広い意味で不正ということが言えるとすると、きびしく言えばトランプ大統領は不正によって選ばれている。不正によって落選するのではなく、その逆だ。そこまで言うのはやや言いすぎかもしれないが、トランプ大統領が選ばれるのには大きな偶有性(偶然性)があることはたしかだろう。トランプ大統領が再選される(選ばれる)のが当たり前だとするのは、そうであることをあたかも自然とさせる神話作用だ。

 参照文献 『現代思想キイ・ワード辞典』鷲田小彌太(わしだこやた)編 『Think 疑え!』ガイ・P・ハリソン 松本剛史訳 『究極の思考術 あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点十五』木山泰嗣(ひろつぐ) 『陰謀論の正体!』田中聡(さとし)