緊縮の政策だと社会の中の弱者を救うことはできないのだろうか

 財政の緊縮の政策によることで、弱者を殺害することにつながる。じっさいにそういう事件が引きおこされたのがある。障害者の施設の障害者の人たちを殺害した事件がおきたが、その犯人は財政の緊縮の政策によっていた。

 弱者を救うためには、反緊縮の政策によるようにしなければならない。こう言われるのがあるが、緊縮の政策だと弱者を救わないことになり、ひどければ弱者を排斥することにつながるのだと言えるのだろうか。弱者を救うためには反緊縮の政策をとることがいるのだろうか。

 緊縮の政策をよしとすることと、弱者の殺害の事件がおきたこととは、まったく関わりがないことだとは言えないのはあるかもしれない。そのことについてを見て行くようにすると、緊縮の政策というよりは、国の財政の危機があることが関わってくる。

 危機がおきているときには、弱い者が犠牲になることがおきやすい。歴史においてはそうしたことがいくつもおきてきた。ナチス・ドイツユダヤ人を殺りくすることを行なった。日本では関東大震災のときに朝鮮の人がデマによって殺された。さいきんでは、いまの政権が財務省にやらせた公文書の改ざんの不正で、財務省の下にいた末端の役人に責任が押しつけられた。

 危機がおきているさいに気をつけなければならないのは、その危機を認識することとともに、弱者が犠牲になることを防いで行くことだろう。贖罪の山羊(スケープゴート)がおきることを防ぐ。弱者が悪玉化されないようにして行く。歴史の負のできごとから導けることとしてそうして行くことがいる。

 国の財政で緊縮か反緊縮かは、上部構造と下部構造では下部構造に当たるものだ。下部構造の重要さはあるものの、それと同じかそれより以上に上部構造もまたその重要さを無視することができづらい。

 弱者がもつ権利というのは上部構造に当たるものであり、それが下部構造よりも重要なことではないということは言えそうにない。権利というのはとても大切なものだから、それがもっと言われてもよいのがある。

 下部構造に焦点を当てすぎてしまうと、上部構造をとり落とすことになることがあるから、そこに気をつけることがいる。上部構造における価値についてのことは軽いものではなくて重みをもつ。

 物理の力と文化の力があるとすると、物理の力のほうがいっけんすると頼もしい。だから物理の力であるお金なんかに焦点を当てることがおきがちだが、文化の力もまた捨ておけないものだ。

 どうするべきかとかどうあるべきかの理想は、物理の力というよりも文化の力に根ざしている。物理の力はあればあるほどよいというのはあるにしても、そこに現実の制約がかからざるをえない。無限ではなくて有限だ。だから、現実の制約がかかっているのをくみ入れるようにして、その中でどのように文化の力を生かして現実化して行くかを探って行く。それが現実的なあり方ではないだろうか。

 社会の中の弱者を救うことでは、それを文化の力の点からすると、すべての人がよい生を生きることがいるということが言える。福祉の点からはそういうことが言える。福祉というのは welfare と言うとされ、well はよくという意味で、fare は生きて行くという意味をもつ。

 社会の中にいる経済における貧しい弱者を救うには、たんに物理の力であるお金の多い少ないによって見るだけではかならずしも十分だとは言えそうにない。それだけではなくて文化の力によって見て行くことがいるものだろう。

 たんに物理としてお金が多い少ないというだけではなくて、社会の中で排除されているのがあるから、どう社会の中で人々を包摂して行くのかが求められる。どのように人々の衣食住の基本の必要(ベーシック・ニーズ)を満たすようにするのかがある。社会の中で貧しい人がいるのは、その人が社会の中で物質の財を相対的にはく奪されていることをしめすのがあるから、それの解決も必要だ。個人の自由の幅(ケイパビリティ)がせばまってしまっているとすると、その幅を広げるようにして行きたい。

 物理の力であるお金を増強できればよいのはあるものの、それには現実の制約がつきまとう。その制約をくみ入れた中でやって行くためには、文化の力を生かして有効に使うようにしてやって行く。文化の力の利点は、それなりの負担がなければ給付はできないなどの現実の制約があることをくみ入れやすく、その制約があることを否定せずに、それとは別に問題を見て行くことができることだろう。

 参照文献 『社会的排除 参加の欠如・不確かな帰属』岩田正美 『弱者の居場所がない社会 貧困・格差と社会的包摂』阿部彩(あべあや) 『事例でみる 生活困窮者』一般社団法人社会的包摂サポートセンター編 『社会福祉とは何か』大久保秀子 一番ヶ瀬(いちばんがせ)康子監修 『大貧困社会』駒村康平(こまむらこうへい) 『現代思想を読む事典』今村仁司