アメリカでおきている黒人の命も大切だ(Black Lives Matter)の抗議の運動と、社会の中の階層の格差

 アメリカでは、白人の考え方や黒人の考え方が色々にある。それらの色々な考え方がまとまらずにぶつかり合っている。それで分断が深まって行く。

 アメリカでおきている抗議の運動では、黒人への警察による暴行とそれによる死亡がきっかけとなっているが、そのことについて NHK の番組ではアメリカには色々な考え方があってまとまっていないためだというような見かたをしていた。

 アメリカでおきている抗議の運動を見なすさいに、NHK の番組で言われているような見なしかたをするのでよいのだろうか。

 NHK の番組による見なし方にまずさがあるのだとすれば、一つには悪い意味での相対主義のようになってしまっている点だろう。アメリカには色々な考え方があるのだとはいっても、その範ちゅうの中にはよいものもあれば悪いものもある。範ちゅうと価値を切り分けて見ることがなりたつ。色々な考え方の中に含まれるものとしては白人優位主義があるが、白人優位主義がよいのだとはちょっと言いがたい。別な考え方としては人種差別に反対するのがあるが、白人優位主義のようなおかしい考え方と同列にあつかうのではまずい。

 アメリカの社会のことはくわしくは知らないのだが、社会の中に紛争(コンフリクト)があるのだとすれば、そこには階層の格差がおきていることがめずらしくない。階層の格差が固定化してしまうと不平等がそのままになりつづけることになる。そこのまずさを見ることがないとならない。

 NHK の番組でとられている見かたでは、悪い意味での相対主義のようであり、またみんなで仲よくしようという和のあり方のようなものを持ち出すことになる。そのような見かたではなく、社会の中におきている対立を見るようにして、対立によって政治の争いとなっているのを見ることがなりたつ。

 対立がおきていて政治の争いになっているさいには、力を持つ者が力を持たない者を承認することがいる。承認をすることとともに、階層の格差を何とかするようにして、不平等になっているのを改めるようにしたい。対立における争点は何なのかをはっきりとさせて、その争点を解決するようにして行く。そうするのでないと、肝心なことが何も片づかないままになってしまう。

 紛争や対立がおきていることそのものは一つの現象だが、それがおきていることのもとは何なのかを探って行くようにしたい。それをさぐるためには、民間のトヨタ自動車で行なわれているような、なぜなのかという問いかけを何回もくり返して行くやり方がある。色々な要因があげられるはずであり、それらをできるだけ漏らさないようにして、できるだけ深いところにある要因を見て行く。そこにたいして手を打つようにすることができれば、うまい手を打ちやすい。

 参照文献 『社会階層 豊かさの中の不平等』原純輔(じゅんすけ) 盛山(せいやま)和夫 『十三歳からのテロ問題―リアルな「正義論」の話』加藤朗(あきら) 「二律背反に耐える思想 あれかこれかでもなく、あれもこれもでもなく」(「思想」No.九九八 二〇〇七年六月号) 今村仁司トヨタ式「スピード問題解決」』若松義人 『考える技術』大前研一