アメリカでおきた警察の暴行による黒人の男性の死と、それへの抗議

 アメリカで、黒人の男性が警察から暴行を受けた。それによって黒人の男性であるジョージ・フロイド氏は死亡した。全米の各地ではこのことにたいする抗議のデモがおきているという。

 なぜジョージ・フロイド氏が警察から暴行を受けて殺されることがおきたのだろうか。このできごとがおきたことのもつ意味あいは小さいものだとは言えそうにない。社会の中でぜい弱性をもつ個人に排除の暴力が振るわれたからだ。

 警察は国家装置に当たるものだが、国民にたいして暴力を振るうことはほんらいはあってはならないことだ。警察の原点は市民警察にあるとされる。それとは別に政治の顔をもつ。政治によるのが公安警察や秘密警察や政治警察だ。

 国民からの税金で警察はなりたっているのがある。国家ではなく国民の側に立たないとならない。警察の目的は国民を守ることにあるのだから、その目的に反することが行なわれると、警察の存在理由(レーゾンデートル)は何なのかということになる。

 国家の側に警察が立ってしまった過去の例としては、日本の戦前や戦時中の高等警察や特別高等警察がある。高等警察や特高警察は国民を守るためのものではなく、天皇を主とする国体を守るためのものだった。日本の警察は昔はとりわけ国民にたいして威圧するところが大きく、おいこら警察と呼ばれていた。おい、こら、と国民に向かって言うことから来ている。そのむだな気位の高さは警察の出自が士族だったことによっている。

 警察や役人などの官憲がやたらにいばっている国は民度が高いとは言えそうにない。民度の低さがいちじるしかったのが日本の戦前や戦時中のあり方ではないだろうか。戦後の日本では、戦前や戦時中よりはほんの少しはましになったが、まだまだ官憲が幅をきかせすぎていて、国民が下に置かれてしまっているところがあり、民度が高くなったとは言えそうにない。日本は役人(と政治家)が政治を牛耳る役人大国である。明治の時代にそのもとがある。

 自由主義からアメリカのできことを見てみられるとすると、無知のベールを持ち出すことができる。もしも自分がアメリカにおいて黒人だとすると、警察から暴行を受けて殺されることはとうてい受け入れられることだとは言えそうにない。立ち場の入れ替え可能性の試しからするとそうしたことが言える。

 自由主義の無知のベールを持ち出してみると、自分がアメリカにおいて黒人であることがあるし、白人であることもあるし、黄色人種であることもある。そのどれでもありえるから、そのどれであったとしても警察から暴行を受けて殺されることがないようであることがいる。自分がどれに当たるのかわからないとすると、どれであったとしてもみなが平等にあつかわれるようでないとならない。そうでないと普遍化できない差別がおきてしまう。

 ジョージ・フロイド氏が警察から暴行を受けて殺されることがおきたのは一つの現象だ。この現象がなぜおきてしまったのかの要因を体系として見て行くようにしたい。いくつもの要因をあげることがなりたつ。

 民間の自動車会社であるトヨタ自動車では、なぜなのかという問いかけをくり返し投げかけるようにして行くことが行なわれる。それと同じように、なぜの問いかけをくり返し投げかけるようにして、核となる要因を見つけて行くようにして、それにたいして手を打つようにして行く。

 自由主義においてはほんらいはあってはならないものである、普遍化できない差別がアメリカではおきてしまっていることがうかがえる。そのことによって社会の中でぜい弱性をもつ個人が被害を受けて犠牲となる。アメリカだけではなく日本の社会の中でもこうしたことはおきている。自由主義では認められないものである、普遍化できない差別がおきないようにして行きたい。

 社会の中の秩序や治安を守るとはいっても、ぜい弱性をもつ個人が被害をこうむるようであってはよくない。そうなってしまうと、法における基本的人権がすべての人において保障されていないことになってしまう。

 すべての個人は基本的人権をもつので、人権が不当に侵害されないようにしなければならない。社会の中でぜい弱性をもつ個人がいかに被害をこうむらないようにするかを重んじて行く。弱者が排除されないような制度としての正義を整えて実践としての正義をなして行くことがいる。強者や多数者のための社会ということになってしまうと社会の中で不正義が行なわれる危うさがおきてくる。

 参照文献 『トヨタ式「スピード問題解決」』若松義人 『一三歳からの法学部入門』荘司雅彦 『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください 井上達夫法哲学入門』井上達夫 『警察はなぜあるのか 行政機関と私たち』原野翹(あきら) 『考える技術』大前研一現代思想を読む事典』今村仁司編 『日本の「運命」について語ろう』浅田次郎 『川からの眺め』野田知佑(ともすけ)