役所が示していた目安を IMV の点から見てみたい―意図と伝達情報と見解

 三七.五度より以上の発熱が四日間つづく。それを目安にしていた。この目安は適していないものだったとして、厚生労働省はこれを削除する意向だという。

 新型コロナウイルスへの感染が広まっている中で、三七.五度より以上の発熱が四日間つづいたら、そこではじめて病院に行ったり相談をしたりするようにされていた。

 厚生労働相は、この目安は誤解して受けとられたと言っていた。これを目安にして病院に行くか行かないかや相談をするかしないかの決め手とするものではなかったという。

 三七.五度より以上の発熱が四日間つづいていれば当然に病院に行ったり相談をしたりすることがいるという意味だった。なおのことそうすることがいるという意味であって、行動するかしないかを左右する最低限の決め手ということではなかった。厚労相はそう釈明をしていたようである。

 この目安についてを IMV の点によって見てみたい。これは意図(Intention)と伝達情報(Message)と見解(View)の三つだ。

 この目安のもっていた意図は、これを下回るのであれば病院に行ったり相談をしたりさせないところにあったのではないだろうか。病院に患者が多く押しかけたり相談する人が増えすぎたりするのを防ぐ。そういう意図があった。

 伝達情報である三七.五度より以上の発熱が四日間つづくのは、それが適したものであるとして受けとられた。国民に誤解されて受けとられたとは言いがたい。目安は適したものであるとの見解がもたれた。

 伝達情報がもしも誤解して受けとられたのであれば、目安は適していないものだとか当てにならないものだということで、まともに受けとられず、信用されないで無視されることになる。受けとる人がそのように信用しないで無視したのではないから、誤解されたのではなく、目安が機能した。伝達情報が理解される見解がもたれた。

 国民をウイルスへの感染から少しでも守ろうということであれば、お上が国民にたいして示す目安としては、たとえば、ほんの少しでも心配だったり不安だったり気になることがあったりするのなら、すぐにでも病院に行ったり相談したりしてください、というふうに言うのがある。

 ほんの少しでも心配や不安や気になることがあれば、病院に行ったり相談したりしてください、という目安は、病院に行ったり相談したりすることをできるだけうながす意図をもつ。病院や相談に近づける。門戸を開く。それとはちがい、三七.五度より以上の発熱が四日間つづくという目安は、そうかんたんには気安く病院に行ったり相談をしたりしないでください、という意図をもつ。病院や相談から遠ざける。門前払いをして追い払う。門戸をせばめる。そういうふうな意図があったのではないかと受けとれるところがある。

 参照文献 『疑う力 ビジネスに生かす「IMV 分析」』西成活裕(にしなりかつひろ)