ウイルスが広まることと普遍経済学―極大と極小

 新型コロナウイルスが広まる前は、有用性の回路の中にあった。ウイルスが広まるようになったことで、その外に出ることになった。回路の中だけではなく外に出るのまでをくみ入れるのは、哲学者のジョルジュ・バタイユ氏のいう普遍経済学だ。

 人間や生物は過剰性をもっていて、生と死がある。極大と極小の二つの極をもつ。そのうちで有用性の回路の中にとどまっているのは極大だけがあるとするもので、限定経済学だとされる。極小があることまでをくみ入れるのは普遍経済学だ。呪われた部分までをくみ入れている。

 生物でも単細胞生物は単純な分裂をくり返すだけなので n だ。中度や高度の生物はオスとメスの生殖があるので多細胞となって 2n となる。2n の生物は死ぬ定めにあるとされる。そういう仕組みになっているといい、生の中に死が内包されていて組みこまれている。生きつづけている中でだんだん乱雑さ(エントロピー)が増えて行く。細胞が傷つきやすくなって行く。生物学者池田清彦氏による。

 有用性の回路の中にとどまっていれば、極大のあり方をとれる。その回路の外に出ることになると極小になって、極大のあり方が(部分的に)とれなくなる。極小のあり方である危機になっているさいにそれをうまく乗り切ることができれば全体が駄目になってしまうのを防げる。危機から逃げずにまともに向かい合う。それで危機を乗り切れるのかどうかが試されることになる。

 参照文献 『現代思想を読む事典』今村仁司編 『大学授業がやってきた! 知の冒険 桐光学園特別授業』