新型コロナウイルスの呼び方と発祥地

 新型コロナウイルスは正式には COVID-19 というそうだ。このウイルスのことを、中国の武漢市から来たものであることから、武漢ウイルスと呼んでいる人がいる。

 新型コロナウイルスは中国の武漢市から来たものだとされるが、それとはちがう説として、アメリカから来たものだというのを見かけた。アメリカでおきたウイルスが中国に持ちこまれたのだという。それで中国で多く感染者がおきることになった。

 アメリカではもともと新型インフルエンザとされるウイルスへの感染が社会の中で広がっていたようで、それによる死者が一万人を超えていたと言われている。これと新型コロナウイルスとの関連性はあるのかないのかがある。

 もしもアメリカからウイルスが来たのだとすれば、武漢ウイルスと呼ぶ文脈においては、武漢ウイルスではなくてアメリカウイルスと呼ばなければならなくなる。

 どこから来たウイルスなのかはいまのところ完全にはっきりとはしていないから、そういう点で修辞になってしまう。名づけには、それをどう呼ぶのかによって修辞の効果がおきることがある。記号内容にたいする記号表現の当てはめだ。

 客観の証拠がまだはっきりと示せない段階だ。ほんとうにここからウイルスがやって来たということが、まちがいのない客観の証拠とともに示せるのでないと、万全の確かさを持っているとまでは言いがたい。

 中国の武漢市から来たウイルスなのかは、まちがいなく確かだとは言い切れない段階だろうし、なおかつ具体の地名をつけてウイルスを呼ぶことはそうするべきではない不適切なことだとされている。もしも日本でウイルスがおきることになったら、日本の具体の地名をつけられてしまうことになる。そうなったら不名誉なことだ。

 参照文献 『論より詭弁 反論理的思考のすすめ』香西秀信