まだ未解決となっていると見られる、財務省の公文書の改ざんの事件

 公文書の改ざんは二度とあってはならない。これからも適正に対応をして行く。首相はそのように述べていた。

 財務省で公文書が改ざんされることがおきたが、そのことについては事実を徹底的に明らかにしたのだと首相はふり返っている。

 財務省に属していた職員が、公文書の改ざんの責任を押しつけられたことを受けて自殺してしまったが、遺書が残されていて、それが週刊誌の記事によって公開された。

 まちがいなくそうだとは言い切れないが、責任を押しつけられた職員が自殺してしまったのは、公権力から排除の暴力をこうむったおそれがあると見なすことがなりたつ。可傷性(ヴァルネラビリティ)があったために贖罪の山羊(スケープゴート)となったうたがいがある。暴力をこうむるできごとは個人のありさまをその前と後とで激変させる。

 公文書の改ざんはたとえ一度でもあってはならないものなのだから、その現象がなぜおきたのかをできるだけ明らかにしてほしいものである。そこがうやむやになっているのがある。

 公文書が改ざんされたのは、政治において適正なことが行なわれなかったことをあらわす。不適正なことが行なわれたことで、政治への不信をぬぐい切ることができない。政治への不信を少しでも払しょくするためには、不徹底になっている事実を明らかにして行くことと、再発の防止の策をとることがいる。

 民間の自動車会社のトヨタ自動車で行なわれているような、なぜそれがおきたのかという問いかけを何回もくり返すようにして、掘り下げて見て行くようにして行きたい。掘り下げが浅いままだと、浅い見かたにとどまってしまい、深いところにある核となる要因を見ることにまでいたりづらい。

 下には厳しくて上には甘いあり方だと、上に不正義がはびこってしまう。上の不正義にたいする批判の声が投げかけられるのは欠かせそうにない。さまざまな声が色々に投げかけられるようにして、人々がもつ不正義の感覚が色々におもてに表出されるようであるのがよい。それをお上が受けとめるようにすることがいる。それがなくて、お上に都合の悪い声にはぜんぶ耳を閉ざしているようでは、お上を信頼することはむずかしい。

 再発の防止の策としては、関係した者や責任をもつ者の処罰と、これから先に同じことがおきたさいの処罰が行なわることがいる。とりわけ責任をもつ上の者に厳しいことがいる。それがなくて、下に厳しいが上には甘いあり方が温存されたままでは、法の決まりはあってなきがごとしとなりかねない。

 法の決まりを強者が自分たちに都合よくかいくぐれるようであっては、法治主義とは言いがたいし、公正とは言いがたいものである。政治が不公正になっていると社会の自由の秩序が崩れてしまい、専制に横すべりすることがおきてくる。国民がもつ不安感につけこんで政治の権力が権威主義になると専制大衆迎合主義になりやすいからそこに気をつけることは欠かせない。

 参照文献 『信頼学の教室』中谷内一也(なかやちかずや) 『トヨタ式「スピード問題解決」』若松義人 『正義 思考のフロンティア』大川正彦 『双書 哲学塾 自由論』井上達夫現代思想を読む事典』今村仁司編 『哲学・思想翻訳語辞典』柴田隆行 石塚正英