憲法の改正がいるのだと首相は言う―憲法の中身の話と進め方の話

 憲法の中にはもはやいまの時代に合わなくなっている部分が少なからずある。それらは変えて行かなければならない。その典型が憲法の九条だ。首相はそうしたことを言っていた。

 首相の言っていることは、憲法の中身についての話だろう。それだけではなくて、中身についての話と進め方についての話を分けて見るのはどうだろうか。

 中身についての話は、白か黒かや一か〇かの二分法では決めがたい。改憲派護憲派があるとして、どちらかだけが全面として正しいとかまちがっているというのではないのではないだろうか。

 一人勝ち型と論争型があるとすると、憲法を改正するかどうかは、一人勝ち型ではなくて論争型だととらえられる。一〇〇対〇でどちらかだけが正しくてどちらかがまちがっているものではなくて、賛否が分かれることがらだ。

 中身の話だけではなくて、進め方の話を重んじるようにして、進め方をどういうふうに適した形でおこなって行くのかが肝心だ。ずさんなやり方で進めるのはのぞましくない。できるかぎりていねいに進めて行くのが適している。

 時間や労力を十分にかけて、少しずつ進めて行く。まちがいがないかどうかを慎重にふり返ることをくり返す。そうしないと、イギリスの欧州連合(EU)の離脱を問いかける国民投票の結果で、必ずしも思っていたようなよい結果が出なかったといったようなことをまねきかねない。

 とり上げるべきことがらをどれだけもらさないようにできるかや、とり落とさないようにできるかがあるから、そこに注意をするようにしたい。正の面だけではなくて負の面がそれぞれにあるのだから、目だちやすい正の面だけではなくて、どういった負の面があるのかをとり落とさないようにしたい。

 憲法の改正についてのことでは、中身の話だけではなくて、進め方についても焦点を当てるようにして、それがどのようなものであれば適していると言えるのかがある。その二つのことを切り分けるようにすることができる。それぞれについての問題を見て行く。それぞれについての問題のありなしをとり上げることができる。

 はじめから中身の正しさが絶対的に決まっているのではないだろうから、途中で変わることがなくはないし、重なり合うところがまったくないとは言えそうにない。たがいにまったく相いれないとまでは言えず、部分に細かく分けてしまえば、共通する点が見えてくるのが見こめる。

 参照文献 『社会問題の社会学赤川学 『民主制の欠点 仲良く論争しよう』内野正幸 『論理が伝わる 世界標準の「議論の技術」 Win-Win へと導く五つの技法』倉島保美