アカとアク―社会主義(共産主義)と資本主義

 アメリカの若者で、社会主義をよしとする人が増えているという。アメリカといえば資本主義と自由主義の国だが、それと反対にあるともいえる社会主義への支持が、若者のあいだで高まっているそうだ。毎日新聞の記事(十二月一日)に出ていた。

 アメリカでもっともうとまれて嫌われてきたのが社会主義である赤だ。その社会主義への支持が若者を中心として増えてきているのは、社会主義は赤だということで悪玉化してきたのが、必ずしもそうするには当たらないものだという理解がおきているのを示している。

 アメリカでは社会主義への支持がおきてきているというが、日本ではどうだろうか。日本では、共産主義というと赤だということで嫌われている。それが見られるのは右派や保守の人たち(の一部)だ。右派や保守の人たちの一部は、日本の共産主義化や社会主義化つまり赤化をおそれていて、それはあってはならないことだとしていた。

 アメリカが進んでいて日本が遅れているとはいちがいには言うことはできない。そうであるものの、日本よりもより資本主義や自由主義の度合いが高いアメリカであっても(であるからこそということかもしれないが)、社会主義にたいする抵抗感や嫌悪感だけではなくて、それへの支持がおきてきている。それがおきているのは、社会主義がどうかということではなくて(それも大事だが)、資本主義のもつ悪が人々に認められていることによっていそうだ。

 資本主義にはプラスとマイナスの面があるだろうが、そのうちのマイナスの面が大きくなっている。マイナスが無視できなくなってきている。その危機感が、アメリカの若者をして、社会主義への関心に向かわせている。

 資本主義のマイナスの面とは言っても、プラスの面もまたあるのであって、そこについては賛否が分かれている。もっと資本主義をよりよいものにして行けば、もっとみんなの益になることにすることができるという説もある。そうはいっても、少なくとも現状の資本主義によるあり方に決して小さくないマイナスがあるのはたしかで、またこれまでにマイナスつまり負の遺産や犠牲が築かれてきたのもある。

 資本主義のマイナスの面として階層化がある。昔の日本では地主と小作というのがあったが、持てる者と持たざる者とに階層化される。持たざる者をつねに生み出して、下位に置かれる階層があることによって社会が保たれる。下位に置かれることで、社会から引きはがされたり、社会に接合されなくなったりしてしまう。

 いたずらに資本主義を合理化してすませてしまうのではなくて、そのマイナスの面である悪のところを見て行くことがいる。資本主義の世の中において、よい目を見られていないで、持たざる者として生きて行くさいに、資本主義はそれを十分に合理化してくれはしないだろう。うなずけるような十分な理由を示してくれはしない。どうしてそうなのかということの神義(正当性)が得られず、それが与えられないのである。

 参照文献 『帝国の条件 自由を育む秩序の原理』橋本努 『悪の力』姜尚中(かんさんじゅん) 『日本の階層システム一 近代化と社会階層』原純輔(じゅんすけ)編 『社会的排除 参加の欠如・不確かな帰属』岩田正