桜を見る会と、国会でとり上げるべきこと―社会的矛盾と分断

 桜を見る会のことなど、国会でとり上げるな。そんな大したことがないことをとり上げるのではなくて、もっとほかの大事なことをとり上げないとならない。テレビ番組でキャスターはそう言っていた。

 テレビ番組のキャスターは、桜を見る会のことは国会でとり上げるべきではないということを言っているが、この意見は完全にまちがっているとまでは言えないかもしれないが、個人としては賛同しかねるのがある。国会でどういうことをとり上げるのがよいのかというよりも、その前の段階の話として、いまの政権やいまの与党には、意味のある政策を立案して議論して実行する能力がほとんどないのではないだろうか。

 いまの政権やいまの与党には、政策をつくったり議論したりすることが大してできていない。なので、どういったことを国会においてとり上げたところで、そう大したちがいはない。国民に広く益になるような、有効なことを行なうのをのぞむことはできづらい。

 国会で意味のあることをとり上げるためには、どういうことを政治において争点にするのかというのがある。意味のあることが争点としておもてにとり上げられていないとならないし、政権や与党にとって不利に働くようなことであっても、争点としてとり上げられることがいる。争点が隠されていては、国民にとって広く益になるようなことをすることのさまたげとなる。

 政権や与党によって都合の悪くない争点はとり上げられるが、都合が悪い争点は、たとえそれに意味があるのだとしても隠される。とり上げられることはない。こうしたかたよりがあるが、このあり方をそのままにしておいて、国会においてどういうことをとり上げるのがふさわしいのかということを見て行っても、そこに見落としや抜かりがあることになるだろう。

 国会というのは議会の中のことだが、議会の中というのはかたよりがあるのが否定できない。政権や与党がかたよったやり方をとっていて、それによってものごとを動かしているのがある。そのかたよりをそのままにするのではなくて、何とかしないとならないし、議会の中だけではなくて、議会の外からの声をもっと受けとめることがあったらよい。

 議会の中だけではなくて、議会の外にも反対勢力はいるのだから、そこからの声を受けとめてすくい上げるようにしないと、よくないあり方がそのまま放っておかれることになってしまう。

 肝心なのは、まず問題があることを見つけて行くことだが、この肝心なことがいまの政権やいまの与党にはあまりできていない。そのために、有効な政策をつくったり論じたりすることが十分にできているとは言えず、不十分になっている。自分たちの政権がやっていることによって、うまくことが運んでいるのだという認識を持っているために、問題を見つけて行くことのさまたげとなっている。

 国会の中でどういったことをとり上げるのがふさわしいのかということよりも前に、それ以前のこととして、そもそもいまの政権やいまの与党は、社会の中にさまざまにある問題を十分に見つけられて行っているとは言えそうにない。それが足りていない。

 問題を十分に見つけられていないのを改めるようにして、とり上げることがいる争点については、たとえ政権や与党にとって不利になるようなことであってもきちんととり上げないとならないし、そこにかたよりがあるようではないのがのぞましい。そこが偏向しているのを無視したままで、とり上げるべきこととかそうではないこととかを見て行っても、国民に広く益になることは見こみづらく、社会的矛盾が何とかなるとは言いがたい。

 社会的矛盾というのは、政権や与党が自分たちに有利なことをやって、不利になることはやらないことによって、広く国民に益になることが行なわれなくなることだ。広く国民にとって損になる。政権や与党が利己的になることによって、社会的矛盾が引きおこることになる。大手の報道機関が政権や与党にたいして空気を読んで忖度(そんたく)することによっても、負の相乗作用によって社会的矛盾はより深まって行く。

 国民にとって益になることという点では、国会でどういうことをとり上げることがよいのかというのだけではなくて、それと同じかそれより以上に、社会的矛盾についてを何とかしなければならない。個人で何かを決めるのではなくて、集団で何かを決めるときにおきてくることが社会的矛盾だ。社会に矛盾がおきていて、分断がおきていて、橋わたしがうまくできていないことは、ないがしろにしてよいことだとは言えそうにない。

 参照文献 『徹底図解 社会心理学山岸俊男監修 『社会的ジレンマ山岸俊男 『現代政治理論』川崎修 杉田敦編 『シンクタンクとは何か 政策起業力の時代』船橋洋一 『「野党」論 何のためにあるのか』吉田徹 『分断社会・日本 なぜ私たちは引き裂かれるのか』(岩波ブックレット)井手英策 松沢裕策編 『ブリッジマンの技術』鎌田浩毅(ひろき)