日本の政治における、負の状態と正の状態―お互いに負ける(lose-lose)と、お互いに勝つ(win-win)

 負の状態と、正の状態がある。日本の政治においては、いまは負の状態になってしまっているのではないだろうか。

 負の状態というのは、互いに負ける(lose-lose)の状態である。正の状態は、互いに勝つ(win-win)である。

 負の状態というのは、たとえば家庭の中でいうと、夫と妻がいて、お互いに悪口を言い合う。お互いにお互いの悪いところを言い合っている。そうしたさまをあげられる。

 負の状態では、紛争によって敵対の状態となっている。お互いに自己保存がとられていて、自己欺まんの自尊心(vainglory)が大きくなっている。それによってお互いに負けることになる。勝者がいない。

 負の状態になっているのは問題だから、それを改めるようにして、正の状態にもって行きたい。

 あくまでもかりに日本の政治が負の状態におちいっているものと見なしたさいのものだから、ほかにも色々に見られるのはあるだろう。かりに負の状態だと見なせるとして、そこに哲学で言われる弁証法を当てはめてみると、正と反がぶつかり合っている。このままだと、負の状態が引きつづく。それを止揚(アウフヘーベン)させないとならない。

 止揚させるには、いくつかの手を打つことができる。お互いのぶつかり合いの争点をはっきりとさせる。(相対的な)少数者や弱者を承認する。お互いにゆずり合う。一方が一個ゆずったら他方が一個ゆずる。部分的に改良して行く。ほかにも色々と手はあるものだろう。

 日本の政治がいま負の状態になっているのだとすれば、与党も野党もどちらもが、その認識を共有するようにして、それを改めるようにして行ければ生産的だ。そうすれば互いに負けるという負の状態を脱せられる見こみがある。

 負の状態になっているとすれば、二分法をとらないようにして、与党が正しいとか、野党がまちがっているとかではなくて、どちらも負けることになりかねないという共通した認識を共有することがいるものだろう。どちらかが白でどちらかが黒というよりは、どちらも灰色だというふうにする。

 たとえ少しずつではあっても、部分的に悪い点を改めていって、改良して行ければ少しは生産的である。それは正の状態においてできることであるが、いまの日本の政治はそうはなっていないのではないだろうか。いまの日本の政治は負の状態になってしまっていて、改良ではなく改悪のようになっている。

 悲観にかたよった見かたではあるから、中立や客観の見かたではないが、個人としては、いまは正の状態になっているのだとは見なしづらい。家庭の中でいうと、夫と妻がお互いにお互いの悪口を言い合っているようで、不和となっている。仁なきあり方である不仁になっている。それを何とかするさいに、ただ野党が悪いとかだらしないとか頼りないというのでは、片づくものではない。白か黒かや一か〇かの二分法をとるのではなくて、灰色をとるようにすることが必要だ。

 参照文献 『論理が伝わる 世界標準の「議論の技術」 Win-Win へと導く五つの技法』倉島保美 『最後に思わず YES と言わせる最強の交渉術 かけひきで絶対負けない実戦テクニック七二』橋下徹 『これが「教養」だ』清水真木(まき) 『できる大人はこう考える』高瀬淳一 『十三歳からのテロ問題―リアルな「正義論」の話』加藤朗(あきら) 『リヴァイアサン長尾龍一